4/26-27

K島さんチームのサヴォア邸での展示設営のお手伝い。色々トラブルはあったけれども最終的にはうまくいったみたい。サヴォア邸は体でおぼえた!とか言ってみたい。

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サヴォア邸でも研究室スタッフのような仕事をする私(映像変換中)。

4/25

スーパーのクズさと近所のマルシェのイマイチさにいい加減腹が立っていて(これは贅沢を言っているのではなくて本当に高くて品質が悪いのです。傷んだトマトやしおれたハーブ、腐りかけの貝なんかを平気で売っている。たまにいいところはあるが)、意を決して評判の良いMarché Président Wilsonまでメトロで行ってみると、確かに評判通りレベルが高く、魚もハエがたかってないし(その辺のマルシェの魚屋はマジで臭い)、野菜もピカピカ系、不揃い系、ビオ系などお好みに応じて色々揃っていて、値段も高くはなく、この品質の日持ちに比べればむしろ安い。高級食材については青天井だが、それ以外は至って普通。ここに来れば辛酸をなめることもないじゃん……。ちょっと通ってみるか。ジャガイモ専門店があってちょっとテンションが上がる。

午後は友人が携帯を買うのに自分のリハーサルがてら付き合ったのだが、SIMカード(free mobileの)が自販機で買えてちょっと衝撃的なくらいのあっけなさ。4G回線20GB/月で20ユーロ。この価格破壊とコンビニエンスさはすごいなあ。自分のiPhoneを見ながら、SIMロックかけてる日本の旧態然とした囲い込み商売を呪う。

夜はサヴォア邸の展示のために来ているK島さんチームにK松さんとK原さんが加わって(みんなKだな)、次の搬入の前に顔見せ的な食事会。日本人だけでしゃべってると本当に日本にいるみたい。

4/24 成瀬2本

こちらに来て見る夢の第1位が「まだ日本にいる」で、あれ、おれ日本にいる。やばくない?ん、それとももう一時帰国したのか?恥ずかしい〜。というやつで、夢には欧米人はほとんど出てこず、日本人は日本人の夢を見るんですな(一度だけ、フランス人にタカラヅカの説明をする夢は見た)。

ここ十日ぐらいこちらの生活に慣れながら日本から持ってきた仕事を片付けるのに追われる日々だったのだが、久しぶりに映画に行く。パリ日本文化会館でずっとやっていたのに行けずじまいだった成瀬レトロスペクティブに行き、壁紙、リーフレット、その他大駱駝艦だらけの中、『晩菊』と『秋立ちぬ』を見た。受付のお姉さんは日本人で、久しぶりに「こんにちは」って挨拶される。なんだか照れくさい。

『晩菊』は子連れの未亡人二人と子供のいない心中未遂の女性の3人が戦後のドタバタの中で息子や娘と別れたり昔の男に幻滅しながらそれぞれ強く生きるという、今なら絶対通らないであろう地味なハナシなのだが、とにかくこれは日本酒映画で、パリにいる私にははっきり言って目の毒。飲んだくれの未亡人の望月優子がそれはもうおいしそうにサケを飲むので「あー、やばいなこれは」とパリの日本酒の値段と飲酒欲を天秤にかけながら見てしまった。それにしても後半モノローグが入ったり、音楽がずっと流れてたり、喜劇的なシーンが多くて、成瀬ってこんな俗っぽい監督なのかしら、と思った。

で、『秋立ちぬ』は未亡人の母親に連れられて信州から上京した少年が、妾の子として育てられた東京の旅館(少年の母親が働くことになる)の少女と仲良くなり、少年の母親が旅館の客と熱海へ駆け落ちしてしまった(二度と出てこない)ことをきっかけに、大人に振り回される現実から抜け出し二人して海を見に行く、という少年少女駆け落ちもので、もう上京した少年と母親が橋を渡るところで少女とすれ違う瞬間から泣きのスイッチが入り、信号で東京の悪童達に置いていかれたり、フェンスをよじ登って野球をするところで遅れをとったり、要所要所で橋が出てきたりで、隣のフランスのオッサンがこっちの手すりの内側にズイズイ進出してこなければ号泣していたであろうものを、多少こついても全く動じないおっさんに小さい声でフランス語で排泄物を意味する単語をつぶやき続けたが甲斐なし。それにしても少年少女とはいえ大悲劇は大悲劇であり、ウェス・アンダーソンもこれを見たんでは、と思わんでもなし。

いやはや、しかし2本見てすっかり日本シックになってしまった。危険なり。

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 歩いてたら急に「Typographie de Firmin Didot」と書いた建物。しかしテナント店舗は全く関係なし。何かいわれがあるのだろうか。そういえばオテル・ド・ヴィルにも名前があったが、ディド先生のことは不勉強でして。

4/23 オーブン

我が部屋には幸運なことにオーブンがあって、これを厚手鍋と組み合わせたら最強じゃんウキウキ☆と思っていたところ、昨日いざ使おうと思ったらタイマーのノブが壊れていてポロっと取れ、タイマーを回すことができないではないか!小一時間あれこれ工夫して直そうとしたのだが全く直らず、私の世界は終わった!と天を仰ぐほどの絶望にみまわれ過去の利用者の杜撰さを呪い殺そうかと思ったのだが(誰か直せよ!)、なんとか気を持ち直して「デロンギのサポセンぐらいあるはずだ、6年前のオーブンならまだ部品があるはず」と思って検索したところ、デロンギストアのようなものは皆無で、怪しいHPの一般店しかない。一応Authorized Resellerと書いてあるが、こんなところで本当に直るのか?しかも遠い……。と半信半疑でモンマルトル方面に向かったところ、思った以上にこじんまりとした町の電気屋のようなところで、はっきりいって散らかっている。しかしバックヤードにはなにやらいろんな部品が並んでいる様子。ずっと電話してたジェラール・ドパルデュー風のおじさん(あくまで雰囲気ね)にうちの壊れたノブ君を渡し、スペアパーツはないかと聞くと奥から箱を出してきてガサガサやるが、あきらかにデカいノブしかない(それでも一応比べてみるおじさん)。無いなら注文できるか、と言って型番を伝えると、専用HPのようなもので注文してくれた。やった!部品代たったの5ユーロ。ありがとう、おじさん!それで私のパリは始まるのだよ!と(いう気持ちで)お店を後にした。感謝しなさいよ、後の利用者!まったく。

ついでにベラスケス展を見ようと思ったら2時間待ちで、証明写真マシンに5ユーロ飲み込まれたこともあり、疲れたので家に帰って仕事しました。

4/20、4/21

4/20
こちらで知り合ったK島さんとK上さんの搬入の手伝いで、かのサヴォア邸に作品搬入するという幸運を授かりました。行きはK上さんとはぐれたり急に電車が止まって降ろされたり大変だったのだけど、素晴らしい梱包のおかげでトラブルなし。お昼はお庭でランチするなど、ピクニック気分(しかし日射しがきつくて途中でギブアップ)。帰りは久しぶりに中華に行って、どこの地方料理とも言えないような、別の意味での無国籍料理を味わいました。来週もう一回搬入に行く予定。

4/21
フラ語レッスン。マラソンに参加したという生徒の話からジョギングの話になり、なぜかみんなムラカミムラカミと言い始めて、「ムラカミって誰」と聞いたら「アーティストだ」と言われ、「小説家のムラカミ?」と聞くと「ああ、本も書いてるね」「アリュキ・ムラカミ(フランス語はHを発音しない)」という人もいる一方で「芸術家だ」という人もいて、なんだかみんな混乱し始めたら、どうやら村上春樹と村上隆を混同していることが判明し、「ムラカミって日本にはそんなにいっぱいいるの!」という話になった。
午後はM澤先生より教えてもらった近所のフォルネイ図書館(徒歩2分)に初めて行ってみるが、椅子も寮のものより良いし、WiFiも一応つながるので、確かにここはオフィスに最適かもしれない。っていうかみんなPC持ち込んでてオフィス状態。なにせ建築が文化財級だから居心地が良い。また利用しよう。

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4/18、4/19

4/18
前日のおかげで昼まで立ち上がれず。おかげで成瀬の『鶴八鶴次郎』を見ることが叶わなかった。私はこうして人生を損していくのだろう。
昼から友人達を連れて大きな本屋を二軒まわり、本を購入。前を何度となく通っていたが入ったことのなかった「Gibert Joseph」はビルまるごと本屋で、入ってみるとその大きさに驚く。なんというか、パリっぽくない大きさだ。例えるなら八重洲ブックセンターというところか。語学の本は悩みに悩んで結局買えないのに、レシピ本は2分で買える私。
オデオン近くのギャラリー街を通ったが、マレ地区のギャラリーとは全然違ってとにかくオカネモチっぽい。現代アート鑑賞がブルジョワのたしなみとでも言わんばかりだ。街のギャラリーでしれっと仏像を展示している感覚もすごい。あと、ひとつ貴重書屋を見つけた。「Livres Anciens」って「古書屋」って訳すわけにはいかないし「古文書屋」でもおかしいから「貴重書屋」とでも言うしかない。
夜は遅くまで日本の仕事をする。

4/19
食べるものが何もないので食材を買いに30分ほど歩いてムフタール通りまで行ってみる。正午過ぎてたので危なかったが、なんとか材料を購入。初めてまともに肉を買うことができた。というのも、こちらは肉の相場が日本と全然違って、鳥ムネがスーパーでキロ3千円ぐらいしたりする。そしてこちらのスーパーは決して安くて品質がそこそこの品を売っているわけではない。マルシェがいいのかと言えばそうとは限らないし、買い物にかなりの選択眼が要求される。とにかく物の値段なんてあってないようなもので、何かと付加価値をつけて高くしようというのがこの街の仕組みなので、「他にたくさん商品があるから」「日曜や夜遅くでもやってるから」「周りに店がないから」「観光地だから」などの理由で値段が全然違うと思う。だいいち肉の部位の名前がまだ覚えられないし。どこでどういう買い方をしたら得なのか、まだ手探り状態である。
帰って仕事を一つ片付け、今日買ってきた材料でプティ・サレを作ろうと思うが、よくよくレシピを読んでみたら、ドゥミ・セル(1/2塩漬け)の肉を買うべきところを普通の肉を買ってきてしまったので(よく考えてみればそりゃあそうだ)、しょうがなく半日塩漬けにしただけの肉で挑戦してみる。結果、そこそこ食えるのだが、塩分と旨味が足りず、結局マスタードで味を足しながら食べる邪道っぷり。こっちの生活に慣れるのにはまだまだ修行が足りませんですばい。

4/17 

夜、日本と韓国の友人で飲み会をしたのはいいのだけれど、帰り際に寮の玄関で別の友人に捕まってしまい、「さっきオープンスタジオで知り合った近所のアーティストの家にこれから飲みに行くから一緒に行かない?」と言われ、ほろ酔いで良い気分だったのでついていったら、家は本当に近かったのだけど、いわゆる一つのヨーロッパ的なパーティーで、爆音でYouTubeを流しながら夜中にみんなダンスしまくり、これは流石に苦情が来ないのか……と心配しつつ飲んでいたら、あなたも踊りなさいよ、と言って激しく踊ってた人は吐きに行くし、かなりのカオスっぷり。バスクから来たカップルと友達になれたのは良かったけど、ちょっと酷かったな……。これがスタンダードなのだろうか。

4/16 ギャラリー巡りと問屋巡り

午前中はフランス語教室。2日間勉強して行ったけど、まだまだ全然わからない。まあ当然なのだが。今日は「最近何してた?」を当てられて、「ジョン・ヒューストンの『ザ・デッド』を見た。」って言ったら先生が「『ザ・デッド』!?素晴らしい!素晴らしい!」と興奮し始めて、先日先生が「ジョン・フォード」って口にしたのを聞き逃さなかった私は「ジョン・ヒューストンは日本じゃそこまで有名じゃない。ジョン・フォードは有名だが、彼に比べたらあんまり。」ってつついたら、「え、誰って言った?」「ジョン・フォードです。」「ジョン・フォードは日本で有名なの!?それは素晴らしい!キャー!」ってまた興奮してしまった。「最近なにしてた?」って聞かれても毎回映画の話をしてしまいそうで、そうなると毎回先生が興奮することになって、周りに申し訳ないな……。

午後から友人に誘われてマレ地区(寮のあるエリア)のギャラリー巡り。単に観光客が多いエリアだと思ってたのだけど、ものすごいギャラリーがひしめき合っていて、知人にマレ地区に住んでいると言うと「いいな〜」と言われたのはこういうことなのか。こちらのギャラリーの垢抜け方はやっぱり羨ましいが、作品ははっきり言って現代アート風の意図の絞られていない未消化な造形物と言う他ないものがほとんどだった。「アーティ」って揶揄はこういうときにつかうのだろうか。あと、アートセンターが発行しているギャラリーマップが間違いだらけでたどり着けないこと多々あり。

その後、先日見つけた(といっても有名らしい)調理道具の問屋さんで鋳物の厚手鍋を購入。近所の店と € 40 ぐらい価格差がある。パリに長期滞在できたらさぞかし楽しそうな道具ばかりが並んでいるが、ここは我慢。この辺りは他に製菓用品の店などもあって、私にとってはディズニーランドである。

帰りにモントルグイユ通りで買ったマグレ・ド・カナール(フォアグラ用の鴨の肉の部分)を焼いて食べたが、予想以上に脂がのっていて、文化の違いを感じる。

 

4/14, 15

4/14
何かと噂の、寮のフランス語教室に行ってみる。受付の人に難しいかどうか聞いてみたら「みんなビギナーだから大丈夫よ〜」とか言われたのに、いざ始まってみたら「下道走ってたのに急に高速乗せられたみたい」っていうやつで、みんな既に結構喋れるし、英語も辞書も禁止でフランス語の説明をフランス語でされるのだけれど、そのフランス語もわからんし、返事もわからんし、そもそも現在形ですらないし、じゅぬこんぽんぱってな具合で2時間半頭がぶっ飛んで、たぶん白髪が増えた。多少やってたからいいものの、これはゼロからの人は無理だろう。やることの優先順位がひっくり返って、とりあえずフランス語教室についていけるように必死で勉強することに。
午後はルーブル通りの大きな郵便局、オペラ・ガルニエの先の切手屋をはしご。途中、すごそうな調理器具屋とカードゲーム屋を見つけて心踊る(あとオフィス・デポとコピー屋も)。
夜は真上の部屋のテキスタイル・インスタレーションの女性のオープンスタジオというかパーティー(「ピクニック」らしい)に行くことに。まさにジャカード織りそのもので、色んな実験をした秀作が展示してあり、バイナリ・コードみたいだね、と談笑するが、非常に刺激を受けた。あと、料理がめっちゃうまい。彼氏はパーカッショニストで、時々上から聞こえる定期的な打撃音は彼のものだったらしい。彼のバンドのギタリストはなんとミース設計の家(シカゴ)とライト設計の家(アイオワ)の両方に住んでるらしく、「He is crazy」と言っていた。私もそう思う。にわかに信じがたい。

4/15
些事を済ませ、食べるものも無いのでクリュニー裏のフィンランド・カフェに行ってお勉強。アメリカンとシナモンロールで千円ぐらいした。この辺はやはり高いのか。もう物価が高くて嫌になる。
昼はドン・シーゲルの『殺人者たち The Killers』を見るはずが、始まってみればなんでM・マストロヤンニが出てるんだ?リー・マーヴィンとカサヴェテスのはずだぞ?と思い始め、ん、そういえば字幕がイタリア語だ!げ、しまったアントニオーニを間違えて買ってしまった!と気づき、まあここで会ったが百年目、大人しく見ることにしたのだけど、うん、まあ、私にはわかりませんというか、退屈でした(ちなみにタイトルは『夜』)。おかげでそのあとのロバート・シオドマク『殺人者 The Killers』(シーゲルのリメイク版と同時上映)でうたた寝してしまった。しかしこの頃のエヴァ・ガードナーって恐ろしく美人だな。まさにファム・ファタールってやつで、人生棒に振ってもおかしくない。

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友人に請われて撮影。

4/13 映画三本

深夜に仕事をひとつ上げたこともあり、今日は朝から映画3本見る予定。ムルナウ『ファウスト』、フォード『馬上の二人』、ヒューストン『荒馬と女』。3本ともデジタルリマスターで、フォードは4K、ヒューストンは2K。フランス語では「digital」じゃなくて「numérique」と言うらしい。

F・W・ムルナウ監督『ファウスト』
90年近く前にこの視覚効果!と終始動揺するが、それにしてもメフィストフェレスがザキヤマさんにしか見えず、私の中では『ベルリン・アレクサンダー広場』に続いてザキヤマさん映画に分類されてしまった。

ジョン・フォード監督『馬上の二人 Les Deux Cavaliers / Two Road Together
冒頭、少年が鐘を鳴らす綱を引っ張るショットから、ああ、もう、天才、とため息をもらさざるを得ないジョン・フォード。冗談が全然聞き取れなかったのが残念だが、ジェームズ・スチュアートってこんな役もやれたのね。タバコをふかす、物を投げる、蹴飛ばす、のフォード節。ヒロインがオルゴールをぶん投げるところでは落涙。ラストはざまあみろ、これぞ男だ、と言いたくなる清々しさ。いやはや、素晴らしき哉。

ジョン・ヒューストン監督『荒馬と女 The Misfits
とんだポロリ映画だな、と思ってたらおっさんはモンローに振り回されるだけじゃなくて最後に男の意地を見せてくれたところが良かった。それにしてもロデオだの飛行機だの馬と格闘するだの、とんでもない。
てっきりジョン・ウェインが出てるものだと思い込んでいて、いつ出て来るんだ、ひょっとしてこのスケベおやじがジョン・ウェインなのか?だったら見たくなかった!とか思ってたらこれはクラーク・ゲーブルでした。良かった、のか?

しかしこんな名画が徒歩15分の場所で毎日のように見られるなんて、ここは天国だ!(まだ本業はやっていないのに。)