到着以来、フラ語の先生であるBがよく遊んでくれる。最近では講座の後にお茶をすることが定例になってきて、世間話やら授業の振り返りやら、とりとめもなく長々と話す。しょっちゅう家にも食事に呼んでくれて、半分は私の語学のためにやってくれているのだろうけど、決してそうとは言わない。お金があったら個人授業を頼んでお金を払うようにしたいのだけれど、どうしても今は捻出できないので、こちらも感謝の意を述べるしかない。彼女の義理の母親も語学の先生で、近所の移民に無料でフランス語を教えていたらしく、筋金入りの人道主義者、反資本主義者だ。何で恩返ししたら良いのやら。私も口が悪いが彼女はもっと悪く、思わずこちらが閉口してしまうほどで、だからお前たちは気が合うのだと誰かに言われているが、最近は現代アーティストのジャーゴンの物真似と、嫌いな映画監督の悪口で深夜まで喋りこんだりしている。
8月中旬に妻が日本から合流。警察庁まで滞在許可証の更新に行くが、4時間待たされた挙句、書類不備で再出頭する羽目になる。おたくの国にお金を落としに来てるのにやたらと厳しいことで。まあ外国人だからしょうがない。
夏に気温が30度まで上がる日は1、2週間しかないこともあり、それ以外の日は本当に過ごしやすく、一日中公園の木陰やカフェのテラス席に座っていられる(余談:ちなみに日本人が想像しがちなようにフランスのカフェはおしゃれな気分を気取るところでは全くなく、家の延長であり、界隈の家と家をつなぐ街路の休憩所のようなところであり、近所の人たちがひと休みしながら店員を含めてお互いの近況を話し合ったりする何か共同の居場所という感じだ。コントワール(カウンター)でエスプレッソを一瞬で飲んで仕事に向かう人もいるし、テラスに座ってそこを偶然通る知人と長々と話し込んだり、1日中読書や書き物をする人もいる。この文化は確かに他の国にはない。そういう気のおけるカフェもパリではなかなか見つけにくくなっているのではあるが)。この2週間ほどの間にフラ語の講座でピクニックが2回あり、やがてやってくる暗い冬を心のどこかに感じながら、今しかないこの季節を楽しむ。何か持っていかなければいけないのでそれはそれで奮起しなければいけないのだが、料理は嫌いではないので苦ではない(お前の脳みその半分は食べ物のことで占められている、と言われる)。去年から色々試したが、結局おいなりさんが仕事量的にもウケ的にもベストだということになる。一応スシだし、出汁さえ変えればベジタリアン対応だし。海苔巻きはイマイチ具を揃えるのが難しいし手間がかかりすぎて、次の日死ぬ。
フラ語の講座の後、お馬鹿な現代アーティストの生徒の話のおかげで何か知的なものに触れないとやっていられなくなり、自分の語学力も顧みずフランス語の本を買い込む。文語はまた別の難しさがある。