昨日の岩絵巡りがあまりにも楽しかったので、予定を変更し、今日も別の公園に岩絵を見に行くこととする。
昨日乗れなかった9時の列車に乗ってカポ・ディ・ポンテに行く。車内は1時間半喋り倒すイタリア人老夫婦4人組。突然大声を出すジジイ。勘弁してほしい。
ナクアーネ国立公園までは坂道を20分ほど登る。受付に着くと、今日が聖母被昇天祭だからか、14時までしか開いていないらしい。昨日のセラディナ=ベドリナ公園よりもお客さんが多く、こちらの方が有名なところなのだろう。昨日買った冊子にも、こちらは視認性の高い岩絵が多いと書いてあったので、ビギナー向けでもある。巨大な人間、走る祈祷師、鹿の神などを見ていると、3時間ほどで見終わった。立ち入り禁止エリアが多かったので、意外とこじんまりした印象である。
その後、町の方まで降りて食事を探すが、どこも閉店している。仕方なく昨日のジェラテリアまで行ってみると、食事と呼べるものはかろうじてクレープだけだったが、それを注文してかきこむように食べる。この街は英語は全く通じなくて、最初は皆ぶっきらぼうに思えるが、最後は優しくて、おまけまでつけてくれる。これが本来のイタリア人気質なのかもしれない。良い町だと思う。
運良くブレーシャ行きの電車に滑り込めたので、2時間ほど散歩する。広場の隣にあった教会に入ると、女性が磔刑になっている姿を本陣に祀っていた。マリアではないし誰のことかと思っていたが、パンフレットを見ると聖アガタという女性らしい。領主の誘いを断ったら嫌がらせを受け、最後には乳房を切り落とされて磔刑になったという。その乳房がパンに似ているからパン屋の守護聖人にもなっているというのはなんとも変な話だとは思うが、権力を持った男のくだらなさというのは今も昔も全く変わらないなと思う。
その後、サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂と、その隣のロマネスク様式のロトンダを見る。あまり観光地化されていないが非常に良い教会である。
夕方、ブレーシャからパルマまでちょうど2時間電車に乗り、20時に着く。もう暗くなっていたが、宿までの道すがら長城のように巨大な煉瓦建築を見かけ、イタリアのスケールの大きさに圧倒される。チェックインを済ませ、空腹なのでスーパーを探すが見つからず、「ピアディーニ」という薄焼きのパンに具材を挟んで食べるファーストフードに出会った。イタリアは本当に小麦粉の使い方にバリエーションがあるなと思う。パスタとピザとフォカッチャしか知らない外国人としては、感心させられるばかりである。
それにしても街の中はサラミやハムばかりが並び、所構わず視覚と嗅覚に訴えかけてくる。肉の匂いが鼻について離れず、これでもかとばかりに豚の片足や太腿が天井から吊られている。この川には血が流れているとしか思えない。長居できる場所ではないと感じる。
ホテルに帰ってテレビをつけるとヴィスコンティの『山猫』がやっていた。イタリアで見るのも一興だと思ったが、テレビが安物すぎて色が全く再現できておらず、B級映画みたいだったのでやめる。