10/5 悲劇その2・ルドゥーの製塩所を横目に

昨日の話になるが、朝早くパリを出て、フランシュ・コンテのブザンソンに昼頃に着き、チェックインした後、近くのアルケスナンにある、幻想建築家(?)ルドゥーの王立製塩所を見に行こうとした。すると、車掌が何やらいぶかしげに僕の切符を見ながら「パスポートを見せろ」だとか聞いてくる。何かと思えばその電車はアルケスナンには停まらず、遥か彼方のリヨンまで2時間半の直行便だと言う。呆然としていたら車掌はそのまま行ってしまった。罰金でも取られるだろうなーと思いながら、まあどうせだからリヨンを楽しむか、と思って乗っていると、晴天のリヨンに到着するまで結局車掌は帰ってこなかった。彼らは手厳しいと聞いていたが、見逃してくれたのだろうか。
まあいいや、と思って次の電車で帰ろうと思い、リヨンを観光することにする。制限時間は二時間で、その後の電車になるとブザンソンに戻るのが夜中になってしまうので、できるだけ次の電車に乗る意向。パル・デュー駅から旧市街の方まで歩き、ブションがひしめきあう中を歩き、やたらと古そうな古本屋や地図屋、リュミエール時代の映画キャメラなんてものまで売っている店などを見物しつつ、早足で観光した。電車の30分ぐらい前に駅に帰ればいいだろうと思って、予定通り着いたのだが、窓口の前にはフランス名物の長蛇の列。僕としては信じられないのだが、郵便局でも切符売り場でも、長蛇の列ができているにもかかわらず、その人数に対して開いている窓口の少なさ。窓口は多いにも関わらず、その大半はfermé(閉まっている)である。「もっと人を雇いなさいよ!あの局長はいかれてるわ!」などと叫ぶマダムがいるにもかかわらず、局員たちは雑談をしながらゆったりと、一人当たり10分ほどかけて処理をしている。僕はその電車に乗ることを諦め、まあ終電でもいいか、と思って順番を待っていたが、ようやく順番が廻ってきて、次の電車の切符をくれ、というと、「もう今日は電車はない」、と言われる。まさか、と思って時刻表を見せると、「この電車は金曜日だけだわ」とのたまう。とりあえず落ち着こうと思って駅のブラッスリーに入ってパナシェを飲みながら戦略を立てる。もう既にルドゥーなどどこかへ行ってしまっている。適当に宿を探し、始発で帰るしか道はない。この際doucheだのsalle de bainsだのは必要ないので、安宿を手元のガイドブックで探す。生憎その日はミス・リヨンみたいなイベントをやっていて、一つ目のホテルは満室であったが、なんとか二つ目のホテルに部屋を取れた。うす壁の向こうでサッカーか何かを見ながら騒ぐ声を子守唄に、23時頃眠りについた。
この行列だけは、理解できないと思った一日だった。