8月某日 休止の終わり

朝起きると、家中が雌牛に囲まれている。家の玄関口には水槽があり、設置された蛇口から常に湧水が流れているのだが、彼らはそこに溜まった水を飲んだり、牧草を食んだりしているようだ。牛たちは全て隣家から来ているらしく、30頭以上はいるらしい。スイスの酪農の実際を見た思いがする。
Haidenという町のマルシェに行き、coopに寄って、アンジェラと子供は隣人の昼食会に出かけた。我々はAlpenhofという峠にあるレジデンスに行き、Andreas Zustなるアーティスト・収集家の残した蔵書の図書室を見せてもらう。スイスのアーティストのものが多いが、クリスチャンからCasper Wolfという風景画家のことなどを聞く。私はジョットー、クレーの図録などをめくる。ジョットーはルネサンスの先駆けだと言われているが、どうにもピンと来ていなかったので、アッシジにジョットーを見に行くのはどうか。それに、動物にも説法をしたという聖フランチェスコのことがずっと気になっている。クリスチャンにそのことを告げると、「ジョットーの図録を見たからだろ」と笑われるが、アッシジは良いところだしパドヴァにもジョットーはあるよ、と言われる。とりあえず次の目的地のブレーシャに行ってから考えようと思う。
夕方は友人のファビアンも合流し、見晴らしの良い公園でピクニック。湖の向こうにドイツの街並みが見える。発酵時間が足りず失敗したというフォカッチャ、乾燥インゲン豆のサラダ。ファビアン作のケーキなどをいただく。そんなことをしている間に、貨物列車の事故でサン・ゴタールのトンネルが通行止めになったというニュースが入る。明日チューリヒからミラノに抜けるためにまさにそのトンネルを通るつもりだったので動揺するが、行けないということはなく、古いルートを通るので時間が1〜2時間余計にかかるということらしい。まあなんとかならないことはないだろう、と運命をSBBに任せて寝る。