10/3 悲劇その1・リール

今日はパリからモンス・ムンダネウムに行かなければならないので、7時にホテルを出る。メトロの駅のホームに着くと、「あと何分で来る」の電光表示が消えており、ホームには人があふれている。どうやら遅延しているらしい。20分待ってようやく来たが、満員で乗れなくなり、また15分乗るのも嫌なので、RERに乗ることにする。出発から1時間ほどしてようやく北駅に着き、窓口に20分ほど並んでリール経由の切符を買おうとするが、「TGVはここじゃない」と言われる。TGVやタリスの発着するホームに行って、国際線の切符売り場じゃないとだめらしい。しょうがないのでそっちに行き、切符を頼むと「1時間後の出発で、リールにて1時間半の乗り換え待ち」だという。計算すると、モンスに着くのは13時半である。じゃあブリュッセル経由はないのか、と聞くと、ないらしい。しばし考えたがしょうがないのでそれを買う。メトロが遅れていなければちゃんと乗れたのに、と思いつつ、ショコラを飲みながら電車を待つ。
初TGVは何やら車体がきしむ音がして危うげだった。
リールはリール・ウーロップ(Europe つまり ヨーロッパ)とリール・フランドルの2つの駅があり、徒歩10分ほどで乗り換えられる。乗り換え時間が1時間半もあるので、軽く観光してついでに昼食でもとろうと歩き始める。ウーロップ駅からフランドル駅まで行くと、なにやらピストルの音が。見ると、消防士風の出で立ちをした人たちが大群でこちらに行進して来る。何かの式典のようだ。しばらくそれを見つめた後、ド・ゴール将軍広場へ。近辺を適当に見た後、あと40分ぐらいあるので昼食をとることにしてカフェに入る。また「日替わり定食」を注文し、出てくるのを待つ。しかし待てども待てども料理は来ない。まあ発車15分前に来れば何とかなるか、ぐらいの気持ちで待っていたが、それを過ぎても来ない。ようやく来たのは発車12分前である。確か牛肉のフレミッシュ・カルボナードだったと思うが、5分でかきこみ全速力でフランドル駅に戻る。電光掲示板を見ると、まだ発車前のようで、11番ホームからということを確認し、僕は確か5番か6番ホームぐらいを見て、左に残っているホームはあと5つぐらいだから、一番端のホームに停まっているあの電車に乗れば良かろうとさしてホーム番号を確認せずに電車に飛び乗った。すると、まったく人気が無い。まあ1等だからいないのだろう、2等ならいるはずだと思い、次の号車に移動してみるが、また無人である。まさか、と思ってもうひとつ次の号車に移動してみるが、やはり無人である。「あ、これはまちがえた!」と思い、急いで電車から出るドアを開けるボタンを押す。しかし、うんともすんともいわない。僕は焦って前の号車に戻り、そのドアのボタンも押してみるが同様である。気は焦る一方で、最初に入ったドアのボタンも押してみるがまた同様。1. もしかして発車する→ 2. どこか知らないところに連れて行かれる→ 3. 車掌なりなんなりに見つかる。 → 4. ろくに言葉も喋れない日本人がなぜか乗っている → 5. 罰金 or 逮捕? ここまで約1秒かからないで思考が進む。とりあえず、やばい。ボタンを連打してもまったく何も変わらない。どこかに何かは無いか、誰かいないか、と思って走って探してみると、何か貨物のようなものを載せる部屋があり、そこにガッチャンと開ける方式の手動ドアがあるのを発見した。半信半疑、神にもすがる思いでそのレバーを上にガッチャンと引き上げてみた。すると、外の光と空気が流れ込んだ。なんとか出ることができたのである。後は野となれで目的の電車のホームを探してみると、よく見えないが隣に発車位置のずれたホームが4つほどあり、その一番手前に目的の11番線があった。電車が止まっているので僕の乗りたかった電車か見てみると、もう既にその電車は行ってしまったようである。僕は肩を落として窓口まで歩き、「別の電車にしてくれ」と片言で聞くと「prochain(次の)ね」と言われる。僕はそこで「prochain」という単語を覚えた。これだけは決して忘れないだろう。
で、モンスに着いたのは結局14時30分。走ってアルシーヴに行ったが15時ちょっと前。急いで2時間調べ物とコピーをし、17時にアルシーヴは閉まり、また来た道を戻り、モンス駅からリール駅に行き、キオスクで買った、映画や演劇などのスケジュール誌(要するに「ぴあ」)「パリスコープ」を読みながら、TGVに揺られて帰るのであった。車窓から見た夕焼けが異常に綺麗だったことだけが救いであった。
夕食はテイクアウト(à emporter)の中華屋で買った焼きそばと、鶏肉のカシューナッツ炒めのようなやつ。焼きそばは日本と味が違う。