10/10-10/14 ドルドーニュ

フランス南西部のドルドーニュへ。目的は洞窟。本来は去年の秋行くはずだったが、ちょうどその時やけに忙しく金銭的な不安もあったため延期にした。この地域は車がないと移動するのが厳しく、本数の少ない電車とバスを駆使する必要があったのだが、インターネットの情報と駅で入手できる時刻表の情報が食い違っていて、ネット上の情報が信用できないこの国では駅の開いている時間に直接駅に出向いて駅員に聞いてみるまでわからず、結局は出たとこ勝負で行動するしかなかった。主要な鉄道路線の工事で運休区間があり、代替バスに乗るなど。こういうのにはすっかり慣れたが、果たして慣れるのがいいのかどうか……。友人によるとTGVの開通以降フランスの地方路線はかなりズタズタになってしまったとか。それもそうだしとりあえずフランス国鉄のデザインがロゴから車両の形から配色から発車ベルまで大嫌いなのだが、それにもいつの間にか慣れてしまったな……。
レゼジーではアブリ・ド・クロマニヨン、アブリ・パトー、コンバレル、フォン・ド・ゴーム、先史博物館を。サルラに移動して参加したガイドつきツアーではルフィニャック洞窟、ル・ロック・サン=クリストフ、ラスコーIIなどを見て回った。ラスコーIIはラスコー洞窟の精巧なコピーで、「数分後にはレプリカであることを忘れる」と言われたが、他の洞窟で感じたような印象を受けなかったのはそれがコピーの出来の問題なのか、あくまでも生きた洞窟ではないからか、それともアウラというべきものなのかはわからない。ただしコピーの出来はかなり良い。当時の考古学のレベルと職人・技師のレベルの高さをうかがわせる。近郊にコンクリート造りの現代建築めいたものが建設中で、何かと思ったら「ラスコーIV」だとのこと。「ラスコーIII」は東京で展示予定の移動式の展示で、ラスコーIIはオリジナルのラスコー洞窟のすぐそばに建てられたため、車の振動の問題を引き起こしていて、ラスコーIV開館と同時に閉鎖されるらしい。そのうち世界各地にディズニーランド的にラスコーV、ラスコーVIができるんじゃないか。とりあえずパリ近郊あたりに。
コンバレルとフォン・ド・ゴームは数人のグループに分かれて洞窟に入り、ガイドが手持ちのライトで線刻、線描による壁画を照らして解説してくれるシステム。夏には早朝から並ばないと当日券が取れないという。正直この2つが一番生々しくて印象的だった。トロッコに乗って見学するルフィニャック洞窟は巨大な洞窟自体に興奮させられるのだが、ここの展示パネルの中にどこかで知っているような名前を発見。「Leroi-Gourhan…..るろわ・ぐらん…….あんどれ・るろわ・ぐらん…..知ってる気がするけど誰だっけ…..」と思っていたが、ふと『身振りと言語』の著者の名前だということに気づく。読んでみればそうとしか読めないのだが、これに限らず日本語表記の著者名と原語の綴りがなかなかつながらず、その綴りと日本語表記がつながったときにハッとさせられることは多い。バルト= Barthes とか、ソシュール= Saussure とか、アングル= Ingres とか、日本語からは想像できない。ここでは2匹だけ止まっていた就寝中の蝙蝠を間近で観察することができた。
レゼジーの国立先史博物館は石器の豊富なバリエーション、その用途、およびその作り方に至るまで詳細に説明している素晴らしい場所。中でも石器作成方法の再現ビデオが、DVDが欲しくなる程良い(売ってなかったが)。入り口のセキュリティ・コントロールはパリより厳しい。
全ての洞窟が全く違う壁画のスタイルで、洞窟自体も独特であるので、今回行けなかったところには次の機会を作って行ってみたい。サルラの街も中世からの建物がよく保存されていてそれを見て回るのは面白かったが、現代の街として活力があるとは言えず、観光客向けの店ばかりで辛かった。
帰りの乗り換えでボルドーをぐるっと散歩し、Intercitéでパリに帰る。