8月某日 地名の喚起力

朝、ホテルをチェックアウトして駅に荷物を預けに行く。2人分の大きさのロッカーで12フラン(2千円)も取られる(しかもピックアップの時に6時間経過の追加料金で+6フラン取られた)。
今日もとりあえずプランパレに移動すると、蚤の市がやっている。服やらガラクタやらにはあまり興味が湧かないので、置き物や皿、ピンバッジなどを漁る。tgp(ジュネーヴ公共交通局)、モナコ水族博物館、モトローラのピンバッジを買う。
昨日と同じパン屋で朝食をとった後、ジュネーヴ民族博物館(MEG)に行く。日本の民博と同じような場所で、アフリカ、中南米、オセアニアの仮面や人形、カナダのトーテムなどと一緒に仏像や曼荼羅が置かれている。長さ20mはあろうかというスクリーンに波の映像が投影されていて、民族音楽が流されているのは意味がわからなかったが、その前に置かれた椅子で休むのにちょうどよかった。ジュネーブは常設展に無料で入れるところが多く、今回もその恩恵に授かったが、企画展は有料。人間と自然との共存をテーマにしたものらしく、興味は惹かれるけれども具体的な展示物が全く不明だし、常設展で満足したのでスルーした。
昼も食べず、キャベツ太郎みたいなスナック菓子で空腹を誤魔化して、ジュネーヴ歴史・美術博物館へ。展示デザイナーが現代美術かぶれで辟易したが、ジュネーブ派の山岳風景画、ホドラー、ジャコメッティが見られたのはよかった。しかし腰痛が酷く、椅子で休み休み見ないとやっていられない。今後の旅程が不安になり、この後会う予定の友人に相談する。マックス・エルンストとIliazdの印刷作品が良かった。
それにしてもジュネーヴの地名は興味深いものが多い。「美しい」という形容詞がついたBel-air(美しい空/空気)、Belle terre(美しい土地)、Belle-Idée(美しいアイデア)。思えばジュネーブ人は「Bonne journée(良い一日を)」の代わりに「Belle journée(美しい一日を)」と言ったり、「Beau séjour(美しい滞在を)」と言ったりする。フランス人が同じように言ったら「気取ってる」と言われるところだが、確かにこんなに美しいところに住んでいたらそう言いたくもなるだろう。他にもEaux-vives(清流、湧水)、Les Acacias(アカシア)、Bout du monde(世界の涯)など、想像力が働く地名に出くわすことが多い。美しい町だと思う理由は地名の掻き立てる光景にもあるだろう。
夕方、電車でフリブールに移動する。本当はベルンに用事があるのだが、何かイベントがあるのか知らないけれども宿が最低3万円レベルなので、そのひと駅前にあるフリブールに泊まることとした。フランス語圏とドイツ語圏の境目らしいが、まだフランス語は通じるだろうか。ジュネーヴはフランス語が通じて本当に助かったが。車窓からはローザンヌまでずっとレマン湖が見え、その向こうにアルプスの山々が見えた。何千メートルもあろうかという山頂から湖に急に落ち込んでいるところもあり、自然の不思議を思う。レマン湖の北岸斜面はずっと葡萄の畑が広がっていて、確かに最適な傾斜だろうなと思う。
夜は屋外でビールを飲んで盛り上がる人たちを尻目に、持ち帰りのファラフェルのドネルを半分ずつ食べる。トルコ系なのかはわからないが、異常に人当たりがいいおじさんだった。フランスのケバブ屋ではあまりこういう人の良さは感じないが、住む場所でこんなに変わるものか、と思う。

ジュネーヴ民族学博物館(MEG)

宇賀神

ヒンドゥー教の「乳海攪拌」から生まれる「宇宙の牛」カーマデーヌ

「Kammavaca」。仏僧の叙階式で使われる。

カメルーンのBamum王国の地図

以下、ジュネーヴ歴史・美術博物館

エロス

少女漫画に与えた影響は計り知れないのだなと思う

唐突にロダン

Edgar Brandt

Adam–Wolfgang Tœpffer

マックス・エルンスト(イメージ)とIliazd(文字)

Alexandre Calame

アルプ

アルベルト・ジャコメッティ

ホドラー