3月8日前半 国境の町へ

朝8時頃起きて、今日は11時まで一人でバルセロナを見て回ることにしていたので、ホテルビュッフェの朝食を一人で先に頂く。奥さんが取ってくれていたホテルで、朝食の評判がいいらしいが、すごく美味かった。後で食べたイタリアのホテルの朝食なんかに比べると、唯一まともな朝食だった。

朝食後、一人でガウディのサグラダ・ファミリアを見に行く。駅を降りると「マジ?」という感じ。この「マジでこれ今ここに建ってるの?」という感覚は、これと古代ローマぐらいだった。ガウディは頭で理解していてわかったつもりになっていたが、実物が理論を凌駕しているとても良い例だと思う。アール・ヌーヴォーやモダニズム以前に自然形態が構造的合理性を持っていることを理解し、それに加えて決定的に美しいということ。前夜の話でヴィクトル・オルタとの比較をしていたが、オルタの超ブルジョワ指向の優美さと対照的に、form follows functionを地で行くガウディ。しかしやはり教会の作り方は踏襲していて、完成すると言われている2256年にはこんなものある部分は時代遅れの長物になってしまう辺りが皮肉と言うか滑稽と言うか。ファサードごとに彫刻のテイストが全然違うし、もはやこれはガウディのテキスト的解釈の痕跡として肯定していくしかないのだろうな。その後ミースのパヴィリオンを見に行くつもりだったが、どうでもよくなってエレベーターに登ったりしてじっくり鑑賞した。

ホテルで寺さん夫妻と合流し、ポルボウ(Portbou)行きの列車に乗る。そこは海岸のあるスペイン=フランスの国境の町で、現在は夏のリゾート地として知られているという。ネット予約可能のホテルが無かった為、オフシーズンのこの時期にその辺境の町でやっているホテルがあるかと不安を感じながら列車に揺られる。風景は徐々に乾燥していき、サボテンが自生し、構造とスラブだけが建てられたビル、そして彼方には山脈が見え始める。あれがピレネーだろうか。山の反対には海が見え始め、目に見えて風景は辺境化していく。と同時に我々は徐々に不安と巡礼の気持ちに包まれていくのだった。

数十分遅れで列車はポルボウに到着。時計は13時過ぎほどだったか。駅は広いが人影はまばら。駅は山際に建てられているため、駅前の道は階段と坂で構成される。荷物の多い我々はなんとかそこを降り、ほとんど閉店しているレストラン街・ホテル街を歩き回り、海岸の側にようやく一見のホテルを見つける。その後町を歩いたが開いているホテルは見つからなかったため、そこで即断した我々は正しかった。とりあえず部屋を取って荷物を置き、遅めの昼食をとることに。ホワイトアスパラガス、ムール貝、ワインとパエリヤなどを食べながら、「ここは久しぶりにまともなレストランだ」と言う寺さん達と、ベンヤミン詣での前にこんな良い思いをしていいのかと笑う。サイゼリヤ以外で初めてまともに食べたムール貝は確かに美味く、磯の香りが鼻に抜ける。

この後時計が15時を回った頃、ベンヤミンへの巡礼となる。

ホテル前よりSants駅を眺める

生誕のファサード上部の樹

受難のファサード

ガウディのアトリエ屋根

ガウディの見ることのできた唯一の尖塔

PORTBOU駅

どうせ後でケバブの写真ばかりになるだろうから今のうちにうまかったものは載せておく。