1/29-2/10

冬至がとうに過ぎたにもかかわらず、相変わらず寒くて暗く、根菜ばかりで鬱々とした日々が続く。思わず「春よ来い」と呟くが、それが童謡なのかはっぴいえんどなのかうろうろしているうちにニューミュージックの女性歌手の歌声が思い浮かんで、思考を遮断する。

イタリア系フランス人の友人Bがラザニアを作ってくれる。ベジタリアンなのでマッシュルームと乾燥セップ、それにトマトとチーズで旨味を出していて、肉よりうまいかもしれない。その後は別の友人Bの檸檬のタルトを食べて、別腹も別々腹も満腹になる。それに今まで一番うまい香菜(コリアンダー)を食べた。夏に格別のバジルやトマトを作るいつもの市場のおばさんのもの。イタリア人はあまり食べないらしいがフランス人はよく食べるとのこと。香菜嫌いな嫁は顔を歪めて軽蔑するような眼差しでこちらを見ていた。

2年ヨーロッパにいながらイタリアに行っていないこともあり、俄かにイタリアへの情熱が湧き上がってくる。フランスにいいものはたくさんあるが、やはりその根っこはイタリアにあるから見に行きたくなるのが人情である。しかし旅行をしようにも行きたい所だらけで絞り込めず、やるべきことも終わってないので3月までには行けそうにはない。唯一それを紛らわせるのは遂に訪れたまともなイタリア料理屋との出会いである。ラビオリもニョッキも簡潔かつ美味。そしてやはり珈琲はパリであってもイタリア料理屋のものは飲める。パリのコーヒーは昔は美味しかったというが、現在はある珈琲豆製造業者がパリのカフェへの卸をほとんど独占していて、その珈琲が砂糖を入れないと飲めないほど美味しくないのである。どこで飲んでもまずい。そこの豆を仕入れると機械やら食器やらがもらえるとか、店舗を開くのに補助金が出るとか、いろいろ聞く。真相は知らないが、とにかく競合相手は出てこないのか?まるでマフィアに牛耳られているようだ。