5/5 カウントダウンはじまる

はやいものでヨーロッパもあと3日(最終日は飛ぶだけ)。出発前日までリサーチしているのでお土産なんか買えるかしら。まあお土産買いに来たわけじゃないからいいんだけど。
昨日遅かったせいで朝ちょっと遅れたけれど、昼前にはBnF旧館到着、閉館前まであれこれ見せてもらう。ついにフンボルト先生のかの有名なあの図版に対面できた。目的の本を出してもらったのだけれど図版が付いておらず、そんなはずはない、と目録を精査していたらそこだけペラで別の登録になっていた。現在非常に貴重な物らしいが、見る時に思わず固唾を飲んだ。こんなこと言っちゃ語弊があるけど、人類って退化してるんじゃないかと疑いたくなる完成度。現代人もがんばります。
閉館前に切りのいいところで飛び出して、まだ間に合うはずだとクリュニーまで地下鉄で行き、ギリギリのところで小津の『お早よう』デジタルリマスター版に間に合う。最初、小津なのに画面が揺れない(昨日はフィルムだから揺れてたよ)ことに慣れなかったけれど、徐々に慣れてくればタイトルに代表されるような日常会話の冗長性に対するシニカルな笑いとスラップスティックな下ネタ、それに勇ちゃんのかわいさにメロメロ(昨日の『麦秋』も勇ちゃんだったよね)。これにはフランス人もやられたらしい。そもそもあんな土手の横に家が建ってるわけないじゃん!こんなに日本の住宅がモダンなわけないじゃん!軽石なんか食ったらだめでしょ!と作り込まれてる嘘とジョークの過激さにハラハラ。不意に河原で踊ったり、行進のように歩いたりするところは『落第はしたけれど』に通じてる。勇ちゃんの身ぶりはドライヤーの『奇跡』のように意味を超えた地平に達してるよね。
そしてその後『秋日和』のデジタルリマスター版を続けてみる。僕にとって小津の入口はこれと『お早よう』『浮草』あたりで、何回か見てるのだけれどいまいち焦点がよくわからなかった映画で今回改めて見てみてもわからないけれど、とにかく結婚式のシーンに俄然弱くなった私にとっては催涙弾だった。未亡人の原節子(いつも娘役だったのに!)と年頃の娘の司葉子を巡って中年3人組が下世話に母娘共に再婚・結婚させようと計画するおじさん萌え映画の様相を見せながら、再婚話のちょっとした行き違いが母娘の喧嘩を生んで、結婚観や再婚が不潔かどうかという昨日の『麦秋』や『青春放課後』のような題材に。そこに颯爽と出てきた娘の友人岡田茉莉子が気っ風の良さを発揮して2人の仲を取り持ち、ここで主役は岡田茉莉子だったかのような活躍をみせる。そんな中、娘の婚前最後の旅行(旅館のセットが凄い!)に行った母娘はいつの間にか仲直りしており(この省略は非常に大胆)、母はこのまま一人で暮らすことを告げる(いつもは笠智衆の役)。それで次のシーンが結婚式の写真撮影のシーンで、小津映画を見ているものなら集合写真の不吉さにハラハラするところだけれどもここはなんてことなく幸福の象徴として描かれ、しかし撮影される対象だった娘とそれを見守っていた母は次のシーンで既に別離している。不在となった娘の穴を埋めるように再び岡田茉莉子が登場し、遊びにくるからと行って家を後にするが、母は憂鬱な表情を浮かべた後に少し笑みを浮かべ、映画は終わる。それにしてもラーメン食ってる机の壁の近さをはじめとしてありとあらゆるセットが不自然。どこからどこまでが指示なのだろうか。帰ったら蓼科日記やシナリオ採録を読みたい。やっぱりギャグは2回やるからギャグになるんだよなあ。
昨日に続き、見るものを優先して完全に昼飯・夕飯を食いっ逸れ、結局ケバブ。あと1日しかないっていうのに何やってるんだか。フランスらしい食事なんて1回しかしてないなー。明日も期待できないけど。日本食は別に恋しくなかったけど、小津映画に出てくるブランデーと鰻がたまらなくうまそうだった……。

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今日は写真がないので昨日のやつを。博物図譜のコウモリの羽を広げた骨格図のやつを参考にしてるらしいです。