スコットランド

いつしか来るのが夢になっていたスコットランドに遂に来てしまった。しかし目的は旅ではないのでハイランドの終着駅まで鉄道旅をしたり島に渡ってみたい思いをなんとか振り払わなければいけない。それでもエジンバラ空港からグラスゴーに移動するバスの車窓だけで、私にとっては夢のような光景であった。何といっても空が美しい。毎度毎度英国領に来るたびに入管で根掘り葉掘り質問責めにされるのは勘弁いただきたいが。「グラフィックデザイナーが」「自腹で」「地図を研究」して、「海外まで資料調査に来て」何がおかしいんだ。

それにしてもどこのアーカイブもアーキビストの仕事に頭が下がる。とりあえず畳2畳ほどの紙が広げられる机から、ずらりと並んだマップケース、地図等のシート状資料を入れるプラスティックのスリーブ、資料保護の包装紙に到るまでハード面が整っている。さらに資料の数の膨大さにもかかわらずよく分類された目録、それにキーワード別の索引の編集までできていて、製本されて利用可能になっている。研究者がアーカイブ作成に関わっていることもあるだろうが、これだけで芸術ものだ。まったく何ともはやである。

何か禅問答的な問いかけをされているように感じるのは私だけだろうか。

モンス

2006年以来だから11年ぶりにベルギーはモンスに来た。ブリュッセルから新品のような電車に揺られてきたら、大ターミナル駅(の作りかけ)のような駅に着き、半信半疑で電車を降りる。何しろ駅名表示板もない。数々の地方都市を破壊していく悪名高き「欧州文化首都」に2年前に選ばれたからか、駅の反対側にはメッセ会場のようなものも見えるが、作りかけの陸橋の橋脚だけが虚しく斜めに生えている。プラットフォームの反対側に架けられた仮設の陸橋を登り、仮設の駅舎を横目に階段を降りる。

パリにいても家がないのでどうせならと2週間ここでオトレ関係のリサーチ。十年いない間にアーカイブもリノベされ、何冊かの公式本が出版され、バッジやTシャツまでできていた。資料のデジタル化が思ったより進んでいるのは驚いたが、何せオトレに関する資料だけでも千箱以上の書類箱があり、気が遠くなる。何も気が遠くなるのは物量だけではなくオトレの構想の途方も無い壮大さで、この頭が吹っ飛ぶような感覚に、何か懐かしさすら覚える。どういう環境で育ったらこんな頭になるのだろうか。

私だけかもしれないがいつもこういう調べ物のときは終わりがけにとんでもないブツを見つけてしまい、慌ただしく複写などしているうちに終わる。結局2週間では全体の地図ができかけたころに出発の刻が来てしまう。オトレの伝記を新たに書き直している某氏はこの間まで4ヶ月に渡って来ていたというが、そのぐらいでも全く足りないのだろう。人の生涯を書くというのはとてつもなく大変なことだ。

渡仏

フランスに帰還。機内ではボーッと『ローガン』など見るが、全く乗れず。マンゴールドさんはいつまでこんなブライアン・シンガーのおこぼれみたいなものをやっているのか。映画の中の世界と、その中で出てくるコミックの世界(クローンのミュータント少女たちによって聖書のように扱われる)の関係がいまいちわからなかった。ところで最近のDCコミックス系の映画化を見ていると、よくもまああんな屈辱的な格好で演技できるな、と思うので、X-MENがモノトーンなタイツしか着なかったのは正解なのかな、と思ったり。
他にトム・クルーズさんの『オール・ユー・ニード・イズ・キル』。こういう反復もの、日本のマンガ・ラノベ・アニメ界隈では流行ってるのだろうか。しかしこういう悪夢をよく見る者としては悪くなし。造型に凝ってる割には敵の生命体の設定があんなあやふやでいいのかとは思うけれども。ハッピーエンドもいらん。あの甲冑重すぎないのかね。
最後に去年の「M-1グランプリ」を見て最近のお笑いの傾向を追いかける。概ね上沼恵美子の採点に頷く。