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6才のボクがなんとかかんとか

伏見にて『6才のボクが、大人になるまで。』。柳沢慎吾(父)と黒沢かずこカットのクリストフ・ヴァルツ(母)の間に生まれた染谷将太が、度重なる母の離婚・再婚を通じてスティーブ・ブシェミそっくりになるまでの物語。12年間に渡り同じキャストで撮影された割に大して何も起きない二時間半。時代は「SEKAI NO OWARI」対「NANIGE NAI NICHIJO」なのか。時代を象徴するヒット曲がちょいちょいフンイキ音楽として差し込まれて、耳を塞ぎたくなった。

日記 年末年始

12/21
l-eにてエレクトロニクス講座発表会。何の分節もない曲をやりたいという妄想から白いカードだけのトランプをやりたいと思い立ち、そこから色々と転々として、白と黒のカード、および論理カードを作ることになった。うまく説明できなかったが、出目次第で推論っぽくなるときもあればならないときもある、ということを許容するのがミソなんだろうな、と思う。作っているプロセスが一番エキサイティングなんだがそれが伝わらないのも問題だった。反省はさておき、久しぶりに制作が楽しかった。

12/24
引っ越しにつき、東京から運び出しの作業。初めて体験するプロ業者の引っ越しは怒涛の勢いで、家主は居場所なく家の片隅で細々と片付けをする。梱包が間に合っておらず迷惑をかけ恐縮。終電で実家に帰るが、運び込む予定の部屋に元から置かれている物の多さに愕然とする。こんなスペースに入るわけない。

12/25
昼に業者が到着し、搬入が始まる。私は突っ立って指示を出すのみ。家具の組み立てまでやってくれて、これであの値段は安い。1、2万をケチって自分たちだけでやるより断然良い。しかし部屋がテトリスならゲームオーバー寸前の状態になり、一個一個梱包を開けて本を本棚に突っ込んで行かないと奥の冷蔵庫や食器棚に辿り着かない。先は遠し。

12/26
転入の手続きをしに最寄りの区役所へ。小さい頃から変わっていない古いビルで、東京にいた時の役所と比べると少し唖然とする。転居受付を済ませた後、年金、国保、住民票発行とたらい回しにされる。これ、一発申請でできないんでっしゃろか。その後向かいの警察署に行くと、これまた「はぐれ刑事純情派」ばりの古くてこじんまりとしたいかにもな建物。今にもぼんちおさむと岡本麗が歩いてきそうだ。
夜、親が見てた日本のテレビドラマが異常に酷かった(沢尻が出てるアパレル業界のやつ)ので、勢いでHuluの二週間無料会員になり、フィンチャーが製作総指揮・監督で関わってるアメリカのテレビドラマ『ハウス・オブ・カード』を見始める。フィンチャー作品っていつも高度に知的で戦略的な人物が出てきてその手際の良さと冷徹さに引き込まれていたら、「えっ、そんなことで?」といういとも簡単なことでボロを出してしまう。その瞬間に白けてしまうことが多いが、今回もその例に漏れず。いやまあ楽しんで見ているのだけれど。

12/27
部屋の片付けを進めた後、家から徒歩15分のところにある小屋にてホン・サンス『自由が丘で』を見る。面白いが、これで満足してはいけないような気がする。

12/28
入稿データを送り、仕事納め。その後栄に行って、Apple TVを買うか迷うがやめる。

12/29
夕方まで子守業務をし、その後栄に行って、Apple TVを買うか迷うがやめる。

12/30
夕方まで子守業務をし、その後栄に行って、Apple TVを買うか迷うがやめる。いい加減頭が腐りそうだ。夜半、はっぴいえんどの「風街」ドキュメンタリーを見る。

12/31
一日中、子守業務。三重より祖母・叔父来る。今年は蕎麦屋で全く働かなかったので年末感無し。エンドレスでアンパンマンとムーミンを見ているうちに年が暮れた。

1/1
昼ごろ起き出し、録画されていた「紅白」を親と一緒にほとんど通しで見てしまった。紅白が人気がなくなったのって、単純にNHKの演出が白けるからじゃなかろうか。その後ダイエットがてらどこもやっていない栄まで徒歩で往復する。夜半、年末に父親が買っていた(!)『はっぴいえんど・マスターピース』を聞く。「ゆでめん」と「風街」のCDとLPのセットだが、LPはプレイヤーが壊れていたらしく、断念。それでもCDは痺れる音だった。

1/2
朝から近鉄に乗り三重の祖母宅へ。駅伝見ながらすき焼きするいつものコース。

1/3
旧友と名古屋競馬へ。今年がラストラン(我々が)なのだが、珍しく勝った。夕方から風邪気味で早めに寝る。

愛するムシェットどこへ行く

渡仏に向けて本格的に金が無く、DVDを売ったら結構な金になるらしいので、ボックスで買ったまま未見だった作品を見ている。

ブレッソン『バルタザールどこへ行く au hasard Balthazar』
つながるかつながらないかギリギリのところを攻めていて刺激的。ロバとライオン、ロバとゾウの切り返しに思わず微笑まざるを得ない。子供の腕が映るだけでエロくなるブレッソン。

ブレッソン『少女ムシェット Mouchette』
3度斜面を転がるところを律儀に3度同じカット割りで撮るところが素晴らしい。レイプされたから死んだ、という単純さに帰結させない良心。

サーク『愛する時と死する時 A Time to Love and a Time to Die』
超大作!映画史にダグラス・サークを持つことの幸福。

『ゴーン・ガール』

デヴィッド・フィンチャーを憎めない程度には私は商業的な人間のようで、いかに『ベンジャミン・バトン』や『ドラゴン・タトゥーの女』がスッカスカで失笑しそうになっても、サスペンスになるとそれなりにハラハラしてしまうので嫌いにはなれない。『ゾディアック』は大好きだし、『セブン』もこれ見よがしだがそんなに嫌いじゃない。『ソーシャル・ネットワーク』もまあ、それなりに好きだ(多分ジェシー君が。)。今日たまたま都心に出たら「先行上映」と銘打たれてやっていた『ゴーン・ガール』も何度か「ダサっ」って呟きかけたが(粉砂糖はないだろ、粉砂糖は。あと冒頭のバーでの回想シーンの入り方)、これは『ゾディアック』に次ぐぐらいの快作ではないか。超・不安要素だったロザムンド・パイク(だって『アウトロー』がさ……)が四つん這いで歩き回る姿は中々に感心したし、最近の脇が甘すぎる映画の殺人者たちに対する鬱憤を忘れさせてくれる爽快な手際の良さには目を見張るものがあった。これであとはちゃんと終わり方で唸らせてくれれば良いんだがなあ。音楽とか、猫の使い方とか、惜しい点を挙げればキリがないけど、警察署、殺風景な現代インテリアの家、地下室、監視カメラ、謎かけ、おネエちゃんなどフィンチャー要素三昧で2時間半楽しめた。

最近見たもの:
・大森立嗣『まほろ駅前狂騒曲』
・サーク『自由の旗風』(DVD)
・サーク『悲しみは空の彼方に』(DVD)
・ルビッチ『生きるべきか死ぬべきか』(DVD)
・ファスビンダー『悪魔のやから』(DVD)

世界は私にジョン・フォードの『香も高きケンタッキー』を見せないつもりらしい。といっても自分が入れた予定にもろかぶりだっただけなので誰のせいでもないのだけれど。蓮實氏の時限爆弾がついに炸裂したかのようにフィルムセンターは超満員だったそうだ。『香も高き』どころか『静かなる男』と『駅馬車』のリマスターさえ見に行けていないのは私の不徳の致すところなのだが。
私はいったい毎日何をやっているのやら。

So close, so close. And yet so far away.

2回見たってうまく言葉にできる気はしないが、それぞれのシーンが明確に頭に思い出されて描写ばかり書いてしまう『ジャージー・ボーイズ』。ひょっとしたら思い出されるシーンの断片を全てつなぎ合わせたら正確に最初から最後までつながるんじゃないかというぐらい明確。気付けば「お・わ・ら・ない(Oh What a Night)」と口ずさんでいる昨今であります。すごく変な映画だとは思うけど、他の新作映画を捨て置いてこれを繰り返し見ても後悔は無いような映画だと思う。エンディングはものすごい多幸感に包まれるけど、どう見たって死後の世界で、映画が死ぬ瞬間すら体験してしまう。もう1回見たらこのおかしさを言葉にできるだろうか。

流石にフランキー・ヴァリの人生に自分を重ね合わせる程傲慢ではないけれども、友人の借金を引き受けて家族を失ったフランキーがラヴ・ソングで再帰するシーンをきっちり撮るところに泣かんではいられんでよ。

ウォーケン様ラブ

『ジャージー・ボーイズ』は何が行われているかわからないがとにかく面白かったのでもう一回見たいと思っているのだけれど、とりあえずウォーケン様が素晴らしく、当然ながらこれ↓を思い出して笑わずにはいられない。

しかし試みにYouTubeで「walken dance」と検索するとこんなマッシュアップ動画が出てくるぐらい、ダンス俳優だったらしい。全然知らなかった……。

ウォーケン様コンプへの道は長い。

ちなみに、うちのAirMac Stationの名前は「walken」である。

籐の椅子

全然映画に行けてないが、ステイサム先生の『バトルフロント』、ホンさんスーさんの『ヘウォンの恋愛日記』、ホウ先生の『童年往事』は見に行った。

『童年往事』はおばあちゃん子の私にとって、祖母のことを思い出させる数少ない映画で、僕はこんなに祖母と出かけることはなかったけれど、もっと遊んでればなあ、と見るたびに思う。うちにもムギュムギュ言う籐の椅子があった気がするけど、あれはどこだったか。大画面で見るとロケシーンにかける情熱がはっきりわかる。最初におばあちゃんが孫を捜して町を歩き回るシーンから、何人ものスタッフがあちこちで指示を出しているのだろうなと想像され、その人物配置とキャメラ位置、遠近感が素晴らしい。孫とかき氷のようなものを食べながら祖母が台湾と大陸を混同し始めるシーンでもわざわざ後ろに列車を走らせるところがとんでもない(その後犬まで線路を横切ろうとする)。キャメラはリー・ピンビン先生との初タッグ。さりげなくも過激。この頃からフィルムがある限りいつまででも撮り続けられるような撮り方を手に入れていたのだな。
そういえば上映前、ロビーにこのおばあさんそっくりの女性がいらっしゃって、びっくりした。幽霊ではあるまいな。

あ、『バトルフロント』はロン毛のステイサム先生が見れるのでお薦めです。いつもイサム先生頼りの映画ばかりに出ていた先生が、他の誰かでもいいような映画に出ながら、徐々にイサム先生の映画になっていくところが良かったです。でもちょっと脚本の脇が甘かったかなあ。

『トゥー・ラバーズ』

理由はわからないけど突然腕に蕁麻疹ができて、どうしようもなく痒いので打ち合わせをキャンセル。寝っ転がっていたけど眠くないのでDVDでジェームズ・グレイ監督の『トゥー・ラバーズ』を見る。
こんなにナイーブで叙情的な話を、抑制された知性的な演出で、説話に偏ることなくあくまで映画的に、かつ丁寧に撮り上げることができる監督というのは、現代アメリカにとって非常に貴重な存在なのではないだろうか。この映画の室内美術に象徴されるように、「家族」を引きずったまま生きる現代の若者の撮り方はとても独特だ。
この映画は、窓の向こうにいるはずだった別々の恋人を持つ男女同士が、ふとしたきっかけで出会い、窓のこちら側(家族、既にいる恋人)を意識しつつ、窓の向こう(別の恋人のもと)に到達し、2人で全く別の場所に出て行くまでの物語として視覚化されている。実際はその禁断の越境がもたらすその後についてが描かれるのだが、基本的に窓のこちらと向こうとの間の葛藤として描かれていると言ってよい。窓のこちら側は壁にかけられた無数の写真によって主人公の男性のルーツである「家族」が象徴され(監督がユダヤ系であることもそこに影響しているだろうか)、唯一の個人的な居場所である自室は、写真が趣味である主人公の大量の資料や荷物によってその性格が表され、それと同時にごく個人的な空間であることが視覚化されている。そして自室の窓からは、まるでヒッチコックの『裏窓』のように別の恋人の生活が覗き見られ、その間をつなぐのは電話によってでしかない。中でも、窓の向こうの恋人と自分の部屋との間の空間的な上下関係が肝であり、自分よりも社会的にハイスペックな男性と不倫関係にある恋人に対する劣等感がそこに無意識的に表されているといっていいのではないだろうか。
それにしても、はじめに2人が出会った時、絶対にこの恋はうまくいくはずがないと思えるのはなぜか。それはいつも幸せになることが無いホアキン君の法則を知っているからだろうか。しかし最初に金髪のグウィネス・パルトロウが現れてこちらに笑顔を見せたときの、絶対にそっちにいってはダメな感覚は、どうにも決定的である。
個人的には『裏切り者』『アンダーカヴァー』『トゥー・ラバーズ』とここまで完璧なのだが、次の『エヴァの告白』が全く乗り切れなかったのは、私がお子様だからか、マリオン・コティヤールが嫌いだからか、あまりにも話がナイーブすぎたからだろうか。もう一度見てみたい。
ブレッソンと全く同じドストエフスキーの『白夜』を原案としていながら、もはや比較対象にならないぐらい全く別の話になっている両者を見て、映画というのは本当に面白いな、と思う。こうなったらそれを読んでみるしか無いな…….。
こうやって見るとブルックリンってとっても素敵な街に思えるけど、ね。

映画成分を補充

久しぶりに映画をちょこちょこと。といってもたった2日間だが。

実家のHDDレコーダーになぜか入ってたジェイソン・ステイサム先生の『トランスポーター3』。ステイサム先生とスー・チー様が見れればそれで良かったけどかなり雑だった『1』と比べて、すごくまともそうなトニスコ風アクション映画に仕上がっていたけど(最近のリュック・ベッソン絡みの映画としては悪くない)、全てヒロインの女がぶち壊すので残念すぎた。どう考えてもあんな全然可愛くない性悪糞ビッチと運び屋が成り行きでデキてしまうのは納得できない。それをしなければいけないという必然性への追い込みも足りず。それ以外はとても楽しめる娯楽映画だったけれども。

あとは姪・甥と一緒に『アナ雪』とか『ラプンツェル』とかも見て、へー最近のディズニーのお姫様と男性像はこうなってるのねー、と勉強したり、キノハウスでピング・クロスビー/ボブ・ホープ/ドロシー・ラムーア出演の『アフリカ珍道中』、ルビッチの『陽気な巴里っ子』(適当な邦題だな……)、ファスビンダーの『シナのルーレット』(とにかく撮影が異常)をハシゴしたり、帰ったらハワイアン・フェアをやってるデニーズでドロシー・ラムーアつながりの《マナクラの月》(ジョン・フォード『ハリケーン』)が流れてて、おっ、と思ったり。

中でも個人的なトラウマ映画館である名古屋シネマテークで見た、たむらまさき監督の『ドライブイン蒲生』はとても清々しい良い映画だった。黒川芽以の体さばきがとても良く。音楽の使い方とか驚くぐらい新鮮で潔い。イメージフォーラムでやっているので、お薦めです。DV夫が加瀬君じゃなくて良かった。