3日目: BnFと『グランド・ブダペスト・ホテル』

WiFi環境がよろしくないので結局昨日の写真はまだ上げられないのだが、昨日帰ったらBnF(フランス国立図書館)から研究図書室の事前認定の受領通知が届いていたので、今朝早くからBnFへ。BnFは中庭の上部(地上)にあるリファレンス・ライブラリーと地下(といっても中庭が掘ってあるので地下感はない)にあるリサーチ・ライブラリーの2つに別れていて、大人なら誰でも入れる前者と違い、後者は少々複雑な手続きをする必要がある。学生は指導教員の推薦書等が必要なようだが、私は一応講師である、という肩書きで日本から事前認定(pré-accréditation)を申請していた。送ったのが金曜なので、土日挟んで4、5日経って受領通知が下りたことになる。
入口の金属探知機と荷物検査を通って中に入ると、インフォメーションがあり、リサーチ・ライブラリーに入るカードが欲しいと言うと順番待ちの整理券をくれる。そして右手にある別の窓口に行って少々の面接を受けると(かなりびびっていたけどカードを3日にするか15日にするか、というレベルで、研究内容についてはさほど聞かれない)リサーチ・ライブラリー用のカードと簡単なインストラクションをしてくれ、利用料を会計窓口で払ってくれとのこと(日本ではありえないけど、有料なのです)。展覧会などと同じ会計窓口で8ユーロ支払う。
ここまででとりあえず地下への潜入許可が下りたことになるのだけれど、ここからも結構複雑で、まずクロークで荷物を預け、代わりに透明の肩掛けプラスチック・バッグをもらう(BnFのロゴ入り)。ラップトップやデジカメなんかも持っていって良いのだが、全部こっちに移し替える必要がある。それを肩から下げて入場ゲートでカードをかざすと、開けゴマ、という感じで重々しい二重の入場門が開く。中に入ったら長いエスカレーターがあって、下の受付で閲覧したい本を言うと行くべきブース(だだっ広い敷地の中は分野毎に大きく別れている)を教えてくれる。再びカードをかざして中に入ると、静まり返った回廊に出る。目の前には例の庭園があり、ロの字型の回廊の両サイドに分野毎の図書室がある。この時点でかなり感動だ。
私は「地理学」の分野だったので「M」の図書室に行って司書の人に欲しい本を告げると「本が到着するまで40分待ってね」と言われる。待ち時間のことはなんとなく知っていたので、備え付けのコンピュータで目録を検索していると、カード読み取り端末を使って本の予約から席の予約、読みたい本のリストの作成など色々なことができることが判明。嗚呼、わが母校の図書館もこれができたら!と無責任なことを思いながら調べ物をしているうちに40分経過。ようやく読みたい本とご対面。ここで「席は取った?」と言われるので「まだ」と言うと、相応しい席を取ってくれる。席にはEthernetケーブルと電源がついていて、建物全体で統一された木材でできたオリジナルのデザインの机と椅子である。いやはや、機能からデザインに至るまでお見逸れ致しやす。
で、結局読みたい本は申し込んでも「これは状態が悪いのでやっぱダメ」とネット経由で言われたりして今日のところはあまり成果が上がらなかったが、利用者カードを取得して使い方を覚えただけでも良しとしなければならない。「本の写真を撮りたいのだけど」と言うと、本ごとに1枚誓約書みたいなのを書かされて、撮ることができた。ちなみにリサーチ・ライブラリーのフロアにはカフェがあって、軽食を取ることができる。ちょっと高級っぽいサンドイッチ700円近くしたことには憤慨したが、文字通り背に腹は代えられないので、冷たい昼飯をむしゃむしゃ食べる。

昼食後、地上階に上がって「été 14(14年夏)」という展示を見る。つまり1914年、第一次世界大戦勃発前夜のヨーロッパの展示で、最初は「フランス人はこうやって自国の春を褒めるのが好きよね」と思っていたが、当時の多色石版のポスターの数々や政治情勢を皮肉った地図の数々は思いがけず面白かった。

16時半ごろ図書館を出て、隣接するmk2のシネコンを見てみると、ウェス・アンダーソンの新作『グランド・ブダペスト・ホテル』がやっているではないですか。昨日Pariscopeで調べたところ結構やっているところがあり、さらにはレトロスペクティブまでやっているところがあることに狂喜していたのだけれど、ここで遭ったが100年目、というやつでシネコンに飛び込む。最初誰1人いないスクリーンに入って「ほんとにここでやるのか?実家の近所でソナチネ見たときも2人はいたぞ?」と思っていたら結局最終的には15人ぐらいにはなった。で、どうだったかというと、喋ってる軽口の半分以上はわからなかったけれど、終わった後しばらく立ち上がれないぐらい凄かった。これぞコメディ、これぞ映画ですよ。あー、もう一回行こうかな。ウェスの最高傑作かもしれない。

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2日目: Arts et Metiers

さすがに1ヶ月間旅日記を書くのもしんどいし、もう私も若くないので「ヨーロッパ最高!」とかそういう気分ではないのだけれど(どちらかというと悪いとこばかり見えるのね、年だから)、とりあえずフランス国立工芸博物館(と訳すのはいかがなものか)で久しぶりに「ヨーロッパ最高!」となったのでここに記しておく。工芸、と言ってもそれは科学技術(ArtsとMétiers)の博物館で、観測・測量から印刷・電信・計算・記録、果ては製鉄工場やダム、掘削機の設計にいたるまで、道具や機械、建築等々の技術発達が如何にルネッサンスや産業革命を実現したか、ということを、実物を以て知ることができる(ここ大事)という素晴らしい学習環境であった。というか、実物の凄さが全て物語っているわけですよ。ハンティントン・ライブラリーの貴重書展示を見たと気も思ったけれども、いくら教科書で「天体望遠鏡の発展が云々」とか「機械の発展が産業革命を云々」とか言っても全く実感湧かないし(事実日本は一週遅れから一気に近代化したわけだから途中の機械が残ってたりしないんだろうが)、こういう展示を見ている国民には絶対勝てないと思わされる。これは別に表象の話だけじゃなくて自然史博物館でもなんでも、これ小中学生のとき見てたら絶対人生変わるでしょ、という圧倒的な違い。グローバル化とかなんとか言ってるけど、ここまで物が違うとは。日本もがんばってるんだろうけど、この差はどうしたものか。
しかしコンピューターのブースになった途端にデジカメの電池が切れる始末。1週間撮り続けてもへたらなかった私のデジカメが……。電池自体がへばってないか、この先不安。なので写真はまた撮りに行こうと思う。

昼: アンファン・ルージュの市場で友人お薦めのクスクス。クスクスってこんなにいっぱい入ってるもんなのか!日本の詐欺!

その後、ポンピドゥーまで行ってみたら定休日で、しょうがないのでノートルダムを見る。よく見るとセンターの柱間に並んでいるのが9人で、左が8人で、右が7人と、シンメトリじゃない。ザグラダ・ファミリアにも通じるような彫刻の豊富さ・緻密さ。

アラブ文化研究所:
まさかあの窓の模様が動くとは。

歩いていたらムサビのパリ賞の寮である、してあんてるなしょなるでざーるがあった。ばざーるでござーる。周りには手製本のノートや手作りの封筒などを無茶苦茶高い値段で売る店があったり(ノート1冊7千円でござい)、地方の手工芸品を売る店があったり、確かに芸術の匂いがするエリアですな。手工芸を大事にすることはこの国の弱点でもあり美点でもあると思います。さへりを輸出したい。

夜: マレ地区のファラフェルの店でファラフェル。「世界一のファラフェル」と書いた店が長期休業でがっかりしたら、その数十メートル先に「この通りで一番のファラフェル」と書いた店がやっていた。そして並んでいるのはその向かいの店、という全く謎な構造。そもそも母国をさておいて「世界一」とはなんたることか。いや、でもまじでうまかったです。しかしこれでも800円近いんだよなあ。全部、あべのせいだ。

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1日目

とりあえず着いた。
移民街ど真ん中、四畳半ぐらいの部屋でなぜか窓にはレースのカーテンしかかかっていない。向かいのアパートの人が曇りガラスでシャワーを浴びててドキドキするじゃないですか。どういうプライベート意識なんだ。

機内で映画4本ぐらい見た。まわりが『LIFE!』ばっかり見てて、善き哉、善き哉。

『シックス・センス』
初めて見た。人が横切ったり、戸棚が開いたりするだけなのに、みんな真剣な顔して怖がってる、という馬鹿馬鹿しさが最高。やるじゃんシャマラン先生。オスメント君の今の姿を考えながら見るとしみじみする。

『グッド・ウィル・ハンティング』
見たことあったような、なかったような。とにかく若いマット・デイモンとベン・アフレックがいちゃいちゃしてるのがお美しい(脚本も彼ら二人)。ガスヴァン先生では一番乗れるかな。

『清須会議』
ごめん無理。「これは誰役」っていうのは名前呼べばいいってもんじゃないと思う。そもそもこの人の「コメディ」の認識には相容れないものを感じるし(とてもワイルダーやルビッチが好きだとか言われたくない)、映画になってないのは当然として、演劇としてもどうなんですか、これ。強いて褒めるとしたら中谷美紀の名古屋弁と踊り。

あと、『パシフィック・リム』の冒頭を見たけど、機内が暗いのにとにかく画面が光るので、自粛。隣の人が『ゼロ・グラヴィティ』見てたけど、意味あるのか、それ。

ホテルに着いて、フォーク20本セットとかシャンプーとか買い込んで就寝。ボディ・ソープがどれか全然わからなかった。
国立図書館の許可がまだ下りない(返信がない)のだけれど、どうしようか。