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4/11 ザ・デッド

午前中、友人の付き添いで郵便局へ。その後マルシェに行ったのだが、気づいたらエコバッグが無かった。何も入っていなかったけれど、多分存在感無さすぎて落としたのだろう。自分はあまり落とし物をしないと思っていたので、少し凹む。

昼間、ジョン・ヒューストンの『ザ・デッド/「ダブリン市民」より Gens de Dublin / The Dead』を見に行く。ジェイムズ・ジョイスの短編を最晩年に映画化したもので、とても謙虚に室内のパーティー映画としてまとめられており、時間も90分以内。そこにまず驚くと共に、何しろ徹頭徹尾雪が降り続けていることが素晴らしく、町の静けさとパーティーの密室性を引き立てていて、詩情が高まる。終映後、言葉がわからなかったため近くの本屋で原作を探したら、バイリンガルの『The Dead』が文庫で売っていたので購入(もちろん英/仏のバイリンガルだが)。

夜、マルシェで買ったムール貝を蒸して、年中これでいいや、と思いながら食べまくる。なにせ安い。もうすぐシーズンが終わってしまうのが悲しいところ。最後はスープをパスタに使ってすっかり酔っ払って撃沈。今回は体調を心配してあまり飲んでいないのだけれど、まあたまにはいいでしょ。

4/10 ヴェルレーヌ

昼間はずっと日本の仕事。参考のためにキオスクで新聞を買い漁るが、フランスでもドイツの新聞なんかを買うと馬鹿高い。600円ぐらいしたりするので、うっかり買うと大変なことになりそうだ。

夕方から友人の誘いでモーリス・ラヴェル音楽院で行われる演奏会「音楽におけるヴェルレーヌ」を聴きに行く。留学中の日本人の友人がピアノで出演するとのことで、司会の先生の言葉はほとんど全くわからなかったが(とにかく喋りが達者)、ヴェルレーヌの詩をもとに曲を書いたドビュッシー、フォーレ、(レイナルド・)アーンの3人の曲を比較するという企画のようで、私はフォーレの《月の光》が聴けただけでちょっと嬉しかったのだけれど、他の曲はほとんど誰が誰の曲なのかわからず、当然詩の内容もわからないので、歌うフランス人生徒さんの顔の筋肉がよく動くなあ、とかいきなりテンション上げて歌ったりできてすごいなあ、とかしょぼいことを考えながら楽しんだ(いや、でもその友人の友人のピアノはすごくよかった)。終わった後、近くのお店で5人で飲んで、パリ在住のあれこれを聞かせてもらった。帰り道には桜も咲いていて(なんか日本のと全然違うけど……)、夜桜を見ながら春の到来を再度感じながら帰る(日本では既に春だったので)。

4/8, 9 レセプション

4/8
語学、仕事、翌日のレセプションのための準備。
夕方、ジョン・ヒューストンの『ロイ・ビーン Juge et Hors-la-loi / The Life and Times of Judge Roy Bean』(1972)を見に行くが、フランス語吹替え版で面食らった。セリフ全然わからなくても面白かったが。脚本ジョン・ミリアスか。確かに後半ダレてそれこそ大乱闘でもしなけりゃ終わらせられなかったかもしれないが、ラスト燃える建物の中に乗馬したまま二階に登ったロイ・ビーンがテラスで娘に姿を見せるところ、泣ける。ハリウッドの古豪がニューシネマに寄ろうとしてなりきれず、頑固なじじいの死に様を見せつけるヒューストンの人生そのものに見える。

4/9
昼から新入居者のレセプション。総合ディレクター(多分一番偉い人)より、ここの「良い住人」になる方法は無いので、皆思い思いのしたいことをするべし、それが「良い住人」だ、とのお言葉。積極的に外に出るべし、とも。
その後は昼食会で、日本人の方々数人と、海外の方数人と友達になった。話してたら古堅さんの友人がいて驚く。世の中狭い。お開きの後、他の人たちの部屋をグランドツアーするが、知らなかった建物もあって、部屋の構造もまちまち。うちの部屋が一番シンプルに絵画用にできてるな、と感じる。
夕方、再びヒューストンの『パナマの死角 Griffes Jaunes / Across the Pacific』(1942)。太平洋を超えて横浜に行って日本の陰謀を阻止する話だと思ってたら、なぜかニューヨークに行ってそこからパナマに行くというよくわからないことになっていたが(だってPacificって書いてあるんだもん)、でも最終的にはヒロヒトの陰謀を阻止する話になっていた。モンタージュはドン・シーゲルってどういう意味だろう。ハンフリー・ボガードって小さいのね。「ビンボウヒマナシ、カネモチヒマアリ」。

帰って仕事する。スティックのりはデパートに行けば3Mのものがあるが、2本で600円。泣ける。

ググってみたら『勇者の赤いバッヂ』のDVDなんか出てるのか……。見たい。

4/7 パンがうまい

本日も身の回りのことを整えていたら日がくれた也。洗濯が一大イベントで、部屋の倉庫からいろんなものを引っ張り出してきて物干しに使う。ようやく定規、プリンター用紙、インク、サランラップ、タッパーなどが手に入ったが、本腰入れて動き出すのに二週間ぐらいかかりそう。

 この国に水切りネット的なものはないのか?

4/6 ミスター・ローレンスの日本語全然わからない

昼間にちょっと行ってついでに買い物して帰ってこようと思っていた映画館が、行ってみたら見当違いだったためにリュクサンブール公園近辺を一周することになり、結果クリュニーで大島の『戦場のメリークリスマス FURYO』とベルトルッチの『革命前夜 Prima della rivoluzione』を見ることとなった。『戦メリ』会場では隣で並んでいたフランス人のおばあさんに話しかけられ、私は小津、成瀬が大好きで、最近は山田洋次の『小さいおうち』がよかったわ、今は谷崎を読んでいるの、とフランス語版の谷崎の本を差し出された。「それはエロティックですね」と答えそうになったが、やめておいた。小津、成瀬と山田を一緒にするなよとは言いたかったが。

イタリア語映画をフランス語字幕で見るのはさすがに無理があったが、わけがわからなくても昂揚し陶酔させてくれるのはベルトルッチがベルトルッチたる所以であり、わけがわかっても退屈な映画とはワケが違うのだ、と確信するところではあったが、微笑ましいシーンもあり、若々しいヌーヴェルヴァーグっ子っぷりが至る所に現れているが、これを撮ったのが23歳だと思うとちょっと死にたくなるほど驚異的な才能である。

すっかり夕方になってしまったので必要な買い物をして帰る。ついに座布団っぽいクッションをゲットした。これで尻を冷やさずに仕事ができる(寮の椅子が寒いのだ)。

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パリ大学芸術・考古学科。かっこいい!ボーザール出身でローマ賞を受賞したポール・ビゴ(Paul Bigot)の仕業らしい。

4/5 引きこもり

日曜、晴れ、パリ、という素晴らしい条件の中で日がな一日部屋にこもって仕事をする私。林檎様のおかげで大変でした。

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唯一外出して買ってきた生ハムと青カビチーズのサンドイッチ。うまし。

4/4 郵便局

フランスに長期滞在するためにはビザだけではなく滞在許可証(Carte de Sejour)を申請しなければいけないのだが、これを申請するためにはまず大使館でもらった書式の残り半分を埋め、書留(配達通知郵便)で送らなければいけない。インターネットで調べたところ、配達通知は「Lettre Recommandé avec avis de Réception」といい、郵便局の窓口で頼めば伝票をくれるとのこと。さっそく9時過ぎから橋を渡ってサン=ルイ島の最寄りの郵便局に行ってみるが、土曜日は10時からとのことでまだ閉まっていた。部屋に戻るのもあれなので、島を半周する。この辺のことを全然知らないのだが、何かこだわりのありそうな店が多い雰囲気で、観光客らしき人たちが群がっていた。純粋散歩ができる余裕ができたら行ってみたい。郵便局に帰ってみると開いていて、フランス語しか喋れなさそうなおじさんとおばさんに片言で尋ねながら、なんとか送れたらしい。めんどくさそうな顔をしていたおじさんの顔が急ににこやかになる。この国の人たちは、注文や質問をした時はつっけんどんだが、会計の後や問題が解決した時はとてもフレンドリーになるような気がする。

ついでに近所にあった、昨日勧められたパン屋の1つでブリオッシュ・スイス(チョコチップが入ったつぶれた革靴みたいなパン)を買って食べて感激する。何を隠そうこれが私の一番好きなパンである。日本ではあんまり売っていないが、初めてこれをパリで食べた時は、世の中にこんなに美味いパンがあるのかと思ったが、今日のも然り。でも店によって結構呼び名が違う気がする。ちなみに2番目に好きなのはベーコン・エピだから覚えといておいてください。

必要なものを買い足したいのだけれど、とりあえず散策がてら左岸へ渡る。サン=ニコラ・デュ・シャルドネ教会(Église Saint-Nicolas du Chardonnet)に立ち寄ってみるとミサの最中で、観光客で申し訳ないがしばらく座ってミサを聞く。かなりアンプリファイされていた。近くで市場が立っていたので、買い方がよくわからないながら、周りの真似をしてあれこれ買ってみる。要領がわからないのでついつい買いすぎてしまい結構高くついたが、私的にはこんなに楽しいことはない。近所でフランス語のレシピ本も買い、とりあえず一回帰る。

M澤氏がパリでルクルーゼを買って米を炊いて暮らしていたとの情報を聞いてぜひ真似しようと思っていたので、これまた近所のデパートへ行く。伊勢丹みたいなものだろうが、文房具フロアがとんでもなく充実していて、文房具売ってないし高いと言っていた出発前の前言を撤回する。文房具が高いのではなくて、文房具に金を払う国だという評価に変わった。ところでルクルーゼは確かに日本より安いのだが思ったよりでかくて重い。M澤氏はこれを日本に持ち帰ったというが、実物を前にするとそんな自信は全く無くなる。だいいち結構小さめのトランクで来たので、多大な犠牲を払うことになりそうだ。とりあえず保留にし、電器屋でドライヤーを購入。晩飯の材料を買い足して部屋に帰る。

それにしても2日間、近所をぐるぐるして疲れた。

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これが寮です(が、私の部屋はこの建物ではありません)。

4/3 寮に到着

飛行機の便がどうしても遅くなるため前乗りしてホテルに泊まっていたわけだが、この日朝から地下鉄で移動するも、4番線は途中数駅が工事中で動かない。しょうがなく寮まで2駅ほど荷物を引きずり歩くことに。何時から受付しているかわからなかったが10時前に着いたら空いていたので一安心。簡単な入寮の受付を済ませたら「部屋の準備がまだなのであと1時間遊んできて」とのこと。とてもノリの良い受付の兄ちゃんにパン屋、スーパー、カフェに加えて電器屋の場所を教えてもらい、散歩がてらスマホを見に行く。2年契約なら結構安いのだが、1年しか滞在しないとなるとかなり高額になりそう。別にiPhoneに拘らなきゃいいのだが、帰っても使えるしなあ、と思うとやっぱりiPhoneになる。まあ要らないと言えば要らないのでとりあえず保留することに。

寮に戻って「終わった?」と聞くと担当に電話してくれ「あと10分だって」と言われたのでその通り待つが、待ったら「あと30分だって」と言われ、「増えとるやないかい!」と思いつつどうせ暇なので待つ。そうするとようやく担当の人が来て案内してくれるが、携帯でずっと誰かと話していて、門の前で長話。だったら電話終わってからでいいのに……。と思うがこの辺がやっぱりフランス的なのだろうか。気長というか何というか。

案内された私の部屋はとても綺麗に使われているが、油絵の具のような匂いが染み付いている。なんだか大学に戻ったようで懐かしい。だいいち風呂とトイレが専用なのが嬉しい。こんな観光地のど真ん中で、これだけ待遇が良いレジデンスなんて、他にあるのだろうか。さすがパリ市が作っただけある。WiFiがひどいと聞いていたが、外部のWiFiに変わったからかとても快適である。荷物を解いてああだこうだしていると色々なものが必要なことがわかり、大きめのスーパーまで買い出しに行く。持てないほど買い込んで寮に帰る、というのを3回ほど繰り返してようやく生活できるようになった感じ。タオルやら包丁やら洗剤やらトイレットペーパーやらを買っていたら2万ぐらいかかってしまった。勿体ないのでできるだけ持ち帰るようにしよう。

さすがに今日は料理する余裕がないし、食材や調味料を揃えるところまで頭が回らないので、買って来たビールとパスタサラダで乾杯。まだ色々なものが足りない。

4月2日 名古屋からパリへ。

4月2日早朝、名古屋からソウル経由でパリに向かう。ソウル仁川空港では奥さんとの記念撮影を頼まれたきっかけで韓国のおじさんと日本語での会話となったが、終始安倍ちゃんと右傾化ジャパンの批判を聞かされて、それには激しく同意するんだが「そうですね」以外になんとも答えようがなく、返答に困った。韓国ではみんな安倍ちゃん見ながら笑ってるとのこと。

ナッツでリターンした大韓航空だが、機種が新しいのか座席に付いてる諸々のシステムは凄くしっかりしていて、全く不便を感じなかった。パンが不味いのはなんともならんが、途中で出たピビンパはちょっと感動するぐらいうまかった。ただ単に飛行機で米とごま油とコチュジャンの和え物が食べられると思っていなかっただけなのだが、密かに興奮する日本人がここにあり。わかめスープも付いていて、毎食これでいいよ、と思う。

システムが凄いからといって、これといって見たい映画があるわけではなく、唯一PTAによるピンチョン映画化『インヒアレント・ヴァイス』が入っていたがこれは映画館で見るしかないと思っていたのでスルーし、『ベイマックス』『セッション』『るろうに剣心:伝説の最期編』の3本を見た。『ベイマックス』はストーリーこそありがちなものだが(身内がマッド化して大ボスにというのは少なくとも最近で『ウルヴァリン侍』『タートルズ』で見たぞ)、ぷよぷよロボットの質感をセリフなしでゆっくりと見せて笑いにつなげるところには感心した。映画館で予告を見ていた『セッション』はとても変な映画だった。青春時代にハマっていた『るろ剣』は、美術や殺陣など新しいことをやろうとしているなと感心したものの、いちいち「うぁあ」とか「うぉお」とか叫んで五月蝿いなと思ったのと、演出を誤魔化すためかもしれないが壮大な音楽を無意味に流すのは勘弁してほしかった。お前はダークナイトか。個人的には原作最大のクライマックスは最後の志々雄との戦いよりも奥義伝授のシーンだと思うのだが(そのあとの追憶編は尻すぼみ甚だしい)、「死んでも奥義を会得して志々雄を倒したい」と懇願し、無行の位で師匠に対峙する弟子・剣心に対し、師匠・比古清十郎から「だからお前は馬鹿弟子なのだ」と言われ続け、「だったら師匠である俺がここで殺してやる」と死が迫った状況に陥ったことで「俺はまだ死ねない」という生への強い意志へと変化することが奥義の会得へと繋がった、というところがミソなのだが、そこが映画では非常に雑に描かれていて、正確には覚えていないが「死んでも斃す、死んでも斃す、俺はまだ死ねない!」と処理されるのは馬鹿かと思った。結局お前はるろ剣を理解していない。個人的に比古清十郎役の福山雅治と斎藤一役の江口洋介はよかったと思う。最後の伊藤博文による「侍たちに敬礼!」は「えっこれで映画終わらすの?」というのがみんなの顔に現れていて笑った。

思わず『るろ剣』について長々と書いてしまったが、20時頃北駅近くの宿に到着。向かいのスーパーの前で明け方4時までダンスの練習をしている黒人女子4人を恨みながら寝起きを繰り返した。

Exif_JPEG_PICTURE手前左から米、ビビンバの具、わかめスープと焼きコチュジャンです。

 

渡航直前

ここ一週間ですること:
・確定申告
・海外転出届の提出
・国民健康保険の抹消
・国民年金の停止
・納税管理人の届け出
・国民健康保険の口座振替の停止届け出
・国民健康保険証の返却
・国民健康保険料の清算
・運転免許の更新期間前更新
・イーモバイルの解約
・携帯の休止
・銀行への国内送金先登録
・各種クレジットカードの引き落とし口座変更
・皮膚科
・胃腸科内科
・歯医者

もう住所とか要らん……。