紙風船

渡仏した当日にようやく滞在先が決まる。友人宅に泊めてもらうことになっていたがフイに。直前までバタバタしていたので機内ではほとんど寝ていたが、少しだけ気になっていた『Molly’s Game』だけぼんやりと見る。ケヴィン・コスナーの生存確認。

シネマテークに見に行った山中貞雄『人情紙風船』に打ちのめされ、終わっても席を立てず。大雨の中、雨宿りをする質屋の娘を見ながら何やら良からぬことを思いつき、ギロッと変わる中村翫右衛門の目つきが、これから起こる悲劇を全て予兆する。生き生きとした町人たちの淀みない動きと聴覚に心地よい台詞回し。肝心の場面を敢えて見せない粋。空間の使い方…。一緒に行ったフランスの友人も感嘆し、「雨のシーン…!」と言っていた。いくら貧しくても心は気高くなくてはいけないという心構えをいつしか忘れてしまっていた。「しかし凄かったんだがやっぱり日本映画は(悲劇ばかりで)生きる気力を与えてはくれないな…。」とも。相すいません。日本映画特集で、他にも見たいものはあったのだが小津の『出来ごころ』だけ見て終わる。忙しくなったところでベルイマン特集とジェーン・フォンダ特集に変わって、よしよしと思っていたら、その後ルノワール特集が始まるとのこと。