2/23-3/10

プロジェクトの仕上げだけれど調べる対象はどんどん膨れ上がって、面白いけどどこかで切るしかない。地図のことをやっていたのにあらゆる自然科学の分野がそれに絡んできて、関係する学者がいちいちスケールが大きいために、はっきり言って手に負えない。自分の教養の低さを呪う。

さすがに映画のことまで頭が回らないし、どちらにせよ見に行かなければならない作品はほとんどかかっていないのだが、チャールズ・ロートン監督『狩人の夜』、マーロン・ブランド監督『片目のジャック』の2つだけは見に行った。2人の俳優が監督した、それも唯一の監督作品である。
ロートンの方は少し作りが粗いと思うところもあるものの(早撮りらしいが)、恐ろしい話でありながら童話や絵本のように語ってしまう空想的才能、特に子供達が舟で逃避行に出た後の夜のシーンが素晴らしく、川、月、そして動物などの自然のモチーフを使って子供の頃の想像力を思い出させてくれるような画を撮った。不気味なサイコパスを演じさせたら右に出る者はいないロバート・ミッチャムはもちろんのこと、彼女が現れてから圧倒的な安心感を観客に与え、サイコパスとの戦いが喜劇化するリリアン・ギッシュの有無を言わさぬ貫禄ある存在。本当にリリアンおばちゃんに拾われてよかったね……。
ブランドの方は、彼が映っているだけでもはや映画になってしまうのだから判断が難しい。仁義を重んじる粗暴な強盗だが女の前では思いつきの嘘と陳腐な口説き文句しか言えない、青さを持った男という役柄がちょっと無理がある。それに女が出てくると途端に甘ったるい映画になって笑わざるをえない。女の趣味も悪い。しかし遠景になるとえも言われないような美しい画を撮り、馬および馬に乗った人間を撮ることに関しては目を見張るものがある。特に冒頭、銀行を襲った2人が馬を失って砂丘の上に追い詰められ、砂塵吹き荒れる中じわじわと追っ手に追い詰められていくシーンは忘れがたい。もともとペキンパーの脚本をキューブリックが撮ることになりブランドと協働しようとしたものの最終的に決裂、という話は見た後で知ったが、もしキューブリックが撮ることに成功していたら彼に対する評価も、映画史も変わっていたのではないかと思わせる。