2/8-10

2/8(月)
昼、トッド・ヘインズ『エデンより彼方に』見に行く。サークの『天が許し給うすべて』へのオマージュというべきかパロディーというべきかいい言葉が見当たらないが、もじりとかひねりとかいう日本語が一番ぴったり来る。サークのものは若い娘と息子を持つブルジョワの未亡人が、雇っていた庭師の息子の若い白人男性に惹かれ、周囲の視線と子供達からの反対によって一度は諦めながらも結局は彼と暮らすことになる(窓には鹿)。こちらは夫は生きているけど同性愛に悩んでおり、恋に落ちる庭師の息子は子持ちの黒人、メイドの女性も黒人で同じサークの『悲しみは空の彼方に』を想起させる。この設定はかなりファスビンダーっぽいし(『不安は魂を食いつくす』は未見)、タイトルのタイポグラフィー、服装、美術の徹底ぶりは美しくも笑える。ジュリアン・ムーアがアホっぽく見えるのはサーク同様(なんであんなに太って見せてるの)。映画におけるリアリティなんか微塵も信じていないようだ。しかし途中から画面に集中させられ、単にパロディーへと転ばない姿勢を感じる。いつもヘインズの映画は主演よりも助演が素晴らしく、主人公がいつもお人形さんなのに対して、まわりはかなり良い演技をしていて、今回もムーアの相談相手となる女性が素晴らしかった。

2/9(火)
朝、フラ語。オリヴェイラの映画を見に行った話をすると、彼がフランス好きでフランスの俳優と仕事をしたりしたこともあり、フランスでは特に有名だった、という話を聞く。またオーストリアの友人からは彼のレトロスペクティブが母国で定期的に行われていると聞き、イスラエルの新しい生徒さんからはオリヴェイラ本人に会ったことがあると聞き(「映画の家」ではなく間違えて本宅に行ってしまい、なんとご本人が現れたとのこと)、日本では映画好きの間でしか知られていない彼のことでこんなに話が広がることを嬉しく思う。
講座の後、ある悪巧みのためにスイスの彫刻家の友人Cと一緒に素材を探しに行く。最初、フラ語の先生に勧められた Weber という店に行ったら工場のような場所に金属が並べられていて、それは圧巻であったが我々の探しているものはなく、次に行った Boesner という美術素材屋で石膏とポリウレタンを買う。偶然そこで日本人の友人Hに出くわし、彼女はシルクスクリーン用のインキを買いに来ていたのだが、高くて困っていた。そこでCがプロトタイプ用ならノリとガッシュを混ぜたので代用できるよ、と教え、Hは喜んで買って行った。彼は本当に何でも一から作るので色々な技術を知っているのだが、コンピューターだけは自分の思い通りにならないと嘆いていた。私と真逆。
夜、いつもお世話になっているT家を久しぶりにうちに招き、飲む。

2/10(水)
昼、植物園の比較解剖学・古生物館へ。最初に来た時は骨格標本のディスプレイの美しさにばかり気を取られていたが、鉄骨ガラス建築によってこのスコーンとした空間が実現されていることに改めて気づくとともに、標本の入ったキャビネットも同じ素材でできているがためにこの明るさ、明瞭さが実現されているのだなと思う。今回はちゃんとどの動物の標本なのかをいちいち見ていったのだが、「otarie」という動物の名前に親近感を持つ。アシカ。
帰って昨日の残りを食べ、作業。

Exif_JPEG_PICTURE