2/6-7

2/6(土)
朝から国立図書館旧館へ。ひと月ぶりぐらいに地図部門に行くと、衝撃のことが発覚。旧館の地図部門は3月末で閉鎖され、5月末に新館で再オープン。それに伴い、既にほとんどの本は転送のため閲覧不可、それ以外の本も順次閲覧終了になっている。これはかなり痛い。しばし呆然とする。どうしたらいいものか。
18時頃、CFでマノエル・ド・オリヴェイラの『Visite ou mémoires et confessions』。上映前、シネマテーク・ポルトゥゲーズの方とフランスでのオリヴェイラの協同者がご挨拶。ポルトガルでもほとんど上映の機会がなかったというオリヴェイラのごく私的な記憶についての作品で、これがパリ初上映だという。会場にも何人か彼の協同者がいらしたようで、国際的なレジスタンスのネットワークのようだ。映画はオリヴェイラの住んでいたという40年代のポルトの近代建築に姿の見えない1組の男女がダイアローグを交わしながら入っていくという構成。建築の構成とそれにまつわる記憶を語りながら巡っていくと、誰もいないその家にはオリヴェイラ本人がいてタイプライターを打っている。傍らにはモナリザの複製。私は数十年前からここに住んでいるが今度売ることになったと語る彼はおもむろに「見せたいフィルムがある」と言ってカメラに向かって映写機のスイッチを入れる。そこには自分の両親や兄弟、自分の育った環境についての映像が流されるが、彼の長寿のおかげで19世紀末・20世紀初期の写真や映像が身近なものとして提示され、時空が歪む思いがする。妻も登場して花壇の花を手折って手に持ちながら彼との協同作業について語る。日が暮れるに連れてダイアローグを交わしていた男女は暗闇の中おぼろげな後ろ姿だけ見せて帰っていくが、語り手だった彼らがいなくなった後もオリヴェイラ自身が今書いている脚本についてカメラに向かって語り続け、夕闇ではっきりとは見えないがさぞや美しいであろう窓からの田園風景を映し、フィルムがなくなって画面が真っ白になり、映写機の音だけを響かせながら映画は終わる。
晩飯はバカリャウ飯の残りと白飯の残り。

2/7(日)
朝、マルシェ。久しぶりの晴天。最近は朝の光が綺麗だ。早朝に来るとマルシェもかなり空いていて、歩きやすいし買いやすい。いつも起きられればいいのだが。「オゼイユ(フダンソウ)ちょうだい」と言ったら「オゼイユはフランス語でお金のことだよ」と言われる。帰りに調べてみたら本当だったが、でもオゼイユはオゼイユとしか言いようがない。
夕方、オートゥイユ庭園で日を浴びるがものの数分で小雨が降ってきて寒くなる。誰のせいだか。正面のではなくサイドの温室が改装されて展示が充実していた。しかしここは人が少ないしいいところだ。精神的に何回か助けられた。私のオアシス。
夜、アメリカの友人Jのコンサートでベルヴィルへ。友人のHと妻と一緒。噂の餃子屋に行ったが確かにうまいし安かった。時間通りにライブ会場のカフェに入ると、言われていたのと一時間ずれていて、ビール飲みながら待つことに。で、ようやく始まった1組目のバンドがちょっといただけなくて、またすぐ上に上がる。2組目のJは彼が言っていた通りベースとドラムのスラッシュなノイズ・デュオだったが(耳栓が配られた)、やっぱりJのドラミングからは目が離せない面白い叩き方をする。終わった後もう帰ろうかと思ったがHが次も見たいと言うので、じゃあ触りだけ、と聞いてみたら若い女の子3人組のロック寄りのフリー・ジャズで、グロッキーなぐらい裏の裏をかいてくるのだけど、特にサックスがかなり骨太でよく勉強してるし才能あるなと思わせる。思わず最後まで聞いてしまった。名前は「コンニチョアー」とかそんな名前だった。フランスにもこういう人たちいるのね(自己陶酔するバンドばかりで)。