11/13-11/21 再訪の旅

11/13
朝起きてフロントに隣人へのクレームを言って部屋を変えてもらった後、グラン・プラスまで歩く。パスを買って朝食をとり、王立美術館へ。いつの間にか4つにセクション分けされていて(そういえば数年前に上野でここの展覧会があり、改装しているとか言っていた)、オールドマスター美術館、世紀末美術館、近代美術館(実際は現代美術)、マグリット美術館と名付けられていた。とりあえず世紀末、マグリットを見たところで体力も時間も尽きる。
夕方、ルイーズあたりを歩きながら記憶を取り戻す。
夜、寝ているとニュース動画の音で目が覚め、パリでテロが起きたという言葉が耳に入ってくる。不謹慎かもしれないがホテルの不快さで眠れないほうが目下の問題だったため、再び寝る。

11/14
朝起きてネットでフランスの新聞を読み、状況を把握する。何度も行ったレストランの隣だったりして、シャルリ・エブドの時との違いを感じる。各方面からの安否確認に返信。
今日はアールヌーヴォー建築のバスツアーに参加。前回と同じツアーだが違うところにも入れて、特にオートリック邸(Maison Autrique)はオルタのフリー・メーソンとの関わりがよく見える場所だった。アールヌーヴォーは構造に鉄骨を使っていることが厳密な定義の前提となるので、ここでの部分的な使用はアールヌーヴォー前夜とでも呼ぶべきものである。他にコンゴ担当事務局長の邸宅というよりはサロンに近いエートヴェルド邸(Hôtel van Eetvelde)、社会主義の影響が強く見られるHenri Jacobs設計の公立小学校(École communale no1 et ancienne école industrielle)。
午後、再び王立美術館でオールドマスター部門を見る。見た後カフェで撃沈。

11/15
マグリット邸へ。いざ家に入ろうとすると財布が無い。15分前にパン屋で取り出してからトラムで2駅乗ってここに来るまでの間に失くしたらしい。来た道を戻って探すが無い。盗まれたのかもしれないが、トラムも混んでいなかったし、よくわからない。美術館のスタッフのお姉さんに事務室のコンピューターを貸してもらって、カード会社に電話して止める。財布の中身より電話代のほうがかかってしまった。ご好意で美術館を無料で見せてもらった後、グランプラスの警察に行って申告書を作ってもらう。警察も見つかることを想定していないのか、超事務的に書類を作ってくれて「以上!」と言って終わる。システマティックで便利といえば便利だけど。日本のカード会社は盗難紛失ダイヤルをフリーダイヤル0120にするのをやめてください。あと説明が親切すぎて電話代がかかります。
夕方、アントワープへ移動。ブリュッセルで家宅捜索があったとのこと。自爆テロを「Kamikaze」って書くのはやめてほしい。発音は「カミカズ」だし。

11/16
月曜日なのでゆっくりする。ベルギーはショコラ・ショーが安い。コーヒーとさして変わらない。冬は天国。寒いけど。

11/17
朝からプランタン=モレトゥスへ。少し展示構成が変わっていた。途中、避難訓練が始まって全員外に出されるというイベントあり。来年リノベされて再オープンと書いてあったが、どこをどうリノベするんだろうか。このままでいい。
それから歩いて20分程の写真美術館へ行き、アウグスト・ザンダー展を見る。『20世紀の人間たち』のような匿名性の高い観相学的ポートレートだけでなく、個人的な家族写真、仕事で撮った建築写真や肖像写真、セルフ・ポートレート、植物、地元やケルンの風景写真など、知られざる側面にスポットを当てる展覧会。ケルンの美術館との共同企画だそうだ。前掲書の収録写真がゼラチン・シルバー・プリントで見られるだけでも贅沢なのだが、風景写真も非常に精密。セルフ・ポートレートが印象に残る。しかしアントワープでザンダーが見られるとは思わなかった。好運。
夕方から、雨。ほんとうに毎日、雨。誰のせいだ。

11/18
午前中、ホテルをチェックアウトした後、妻は私の薦めでザンダーを見に行って、僕は疲労が酷いのでカフェにて休憩する。多分心理的な疲労もあるのだろう。どうにも身体が重い。
昼過ぎ、帰ってきた妻と合流し、デン・ハーグに移動する。本当は今日パリに帰る予定だったが、まだ落ち着いてないようだし、帰りのバスをキャンセルして少し足を延ばすことに。オランダ、改札がバーコード/IC読み取り式で、歓喜。

11/19
午前中、朝一でランドリーに行き、洗濯している間カフェで新聞を読む。もちろんオランダ語だから読むというよりは解読に近い。「日本はジハーディストを知らない。東京は行動ではなく美辞麗句で戦う」と書かれていた。また何か言ったのか、あいつ。あいつのおかげで日本もテロ対象。他国の戦争に自ら首突っ込む必要がどこにあるんだ。
昼からハーグ市立美術館へ。ここはモンドリアンの具象画から抽象画に至るまでの経緯が見られる素晴らしいコレクションがあり、またノイラート展の時にアルンツの資料を見せてもらいに来た感慨深い美術館。しかし大きく変わってしまっていて絶望する。時代のかけ離れた絵画をテーマで分類して新旧ごっちゃに展示し、さらに地下には「ヴンダーカマー」を免罪符にした全く意味のわからない無茶苦茶な展示を設置。ベルラーヘ建築の中庭は埋めてしまってカフェとショップに改造。それらに目を瞑るとしても、件のモンドリアンのコレクションは、デ・スティルの模倣デザインで展示空間を作り、その中に部分的に放り込まれていた。前は大きなホールにモンドリアンだけ飾ってあったのに。ヨーロッパの良心だと思っていたのに、ここにも反知識主義が侵入してきてると思うとショックで立ち直れない。

11/20
日帰りでロッテルダムへ。現代建築が酷い。今まで見た都市の中で一番酷い。日本はこんなの真似したら終わりだ。批評家がいくら理屈つけても酷いものは酷い。
ゾンネフェルト邸(Huis Sonneveld)、ボーイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館(Museum Boijmans Van Beuningen)を見て、展示品が盗まれたので有名なクンストハル(Kunsthal)の外だけ見てハーグに帰る。

11/21
ホテルをチェックアウトしてマウリッツハイス美術館へ。ここも改装して入り口が地下になっていた。
夕方、タリスにてパリに帰る。