さよならアメリカ さよならニッポン

こういう時勢だからか、はっぴいえんどの「さよならアメリカ さよならニッポン」という曲が無性に聴きたくて。特に再結成コンサートの時の映像をいつまでも見ている(動く大瀧氏が見れる!)。解散アルバムのためにアメリカでレコーディングし、ヴァン・ダイク・パークスやローウェル・ジョージ(リトル・フィート)が参加した曲だが、作ってきた曲が無くなった大瀧が困って2つだけのコード進行の曲を弾いていたら、そこにヴァン・ダイクがやってきていきなり「プロデュースさせろ」と言い、短時間で作り上げた曲だという割に、それまでバッファロー・スプリングフィールドというアメリカのバンドに影響を受け、ロックに日本語を載せようとしてきたはっぴいえんどのメンバーが、実際にアメリカに来て感じた二つの母国への複雑な感情が音にも詩にも純粋に現れているように思われる。問題なのは、松本隆の詞である「さよならアメリカ」は受け入れやすいのだけど、その後に「さよならニッポン」が続くところである。アメリカだけでなく日本にも訣別を。しかも「日本」ではなく(海外から見たところの)「ニッポン」というところが、この曲の不思議などこでもない感じを作っている。単にことばの音だけで決めたのかもしれないけれど。
政治的な歌では決してないが、さよならアメリカさよならニッポンな状況が曲の発表40年後にも続いていて、妙に意味を重ねてしまうのが哀しい。でも例えばデザインにしても状況はあまり変わってないよなあ。しかしこれはいくらでも聴いていられるいい曲。