4/20 シュテーデル美術館

フランクフルト2日目。実は昨日からイースターというやつで、店が悉く休み。博物館系もそれがあるので日程調整が大変なのだが、とりあえず今日はカンを頼りにシュテーデル美術館に行くことにする。
ところが、これが本当に凄かった。僕の見てきた美術館の中で、収蔵品の購入と選別、そして展示の編集としては最高の場所ではないだろうか(そんなに誇れる程見ているわけではないが)。特に、これまで僕はアントワープからユトレヒトを通ってフランクフルトにやってきたわけだが、ここのコレクションは主にオランダ、ベルギー、そしてここドイツの絵画の地域的連関に主軸を置いているようで、まさに西洋美術史の数世紀が主題、媒体、技法、描き方、社会的状況などの観点から体感的にかつ地勢的に知ることができるのだ。
図像学的な意味で恐ろしく過剰に記号が密集した14世紀オランダの祭壇画が15世紀後半にドイツに入ってきた経緯、それが16世紀にホルバイン、クラナッハ、デューラー達の肖像画や風景画となり、アントワープの経済的繁栄の恩恵を得て起こったルーベンス、ヨルダーンス、ブリューゲル親子達を中心としたフランドル絵画の隆盛、レンブラントによるスペクタクルの導入とフェルメールを代表とした民衆的な風景画と室内画の発生、などなど。そうした編集がかなり綿密にキャプションから空間的配置に至るまで行き届いている。昔は祭壇画やキリスト教美術なんかまったくわからなかったけど、数を見てると段々面白くなってくるのが不思議。
そしてこれは単なるツーリストのロマンチシズムだけれど、パリで、そしてアントワープでずっと地理学の文献を見てきた後に、ここにあるフェルメール作品の題名はまさに『地理学者』。たまには運命論者になってもいい気がしてくる。気になるところというのは必ず無意識下でつながっていて、気軽に赴くべきなのだ。
18世紀までで既に4時間近く経っていたが、階下の近代美術のフロア、これもかなり良い並べ方と作品購入のチョイス。教科書に載らないような有名ではない作品がほとんどであるが、それでもこれが重要だと思わせるものを持っている。ただ集めているだけじゃなくて、そこにちゃんと選択眼がある。そしてさらりとアウグスト・ザンダーの写真を滑り込ませるセンス。企画展のエミール・ノルデ展も出品点数、編集共に非常に力が入っていて、刮目させられる。難癖をつけるならば動線が時系列ではないことだが、建物の性質上しょうがないことなのだろう。地下が現代美術っぽかったけれども、ちょっとこれ以上見られそうにないので失敬する。

夕方ようやくシュテーデルを見終わり、ちょっと休憩した後に映画博物館へ。なんとここでやっていたのがファスビンダーの企画展で、思わず水を得た魚のようにテンションが上がったが、展覧会自体は「ファスビンダーをテーマにした作品を作ったアーティストの作品」を中心としていて、タイトルは「ファスビンダー・ナウ」。ごめん、そういうの、本気で、要らない。いや誠意を持ってアングルとか切り返しとか照明の検証映像を作ってる人もいるのだけれど、そこに「アーティストとしての私」を出してくる人は、あなたの個展でやってください、としか言いたくない。というか映画の博物館展示ってやっぱり無理があるよね。まあスクリプトとかスナップ写真とかは見れて良かったけれども。常設展は映画装置の発明に関する展示と映画編集技法に関する展示。リュミエールやパテェ、メリエス等の映画初期の多様性に関する上映が楽しかった。

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