土地の塩

『山猫』修復版のプリント上映。ありえない上映ミスに、嗚呼フランスだけでなく日本もか、と嘆息を漏らす。おまけに最初からかけ直さないときている。観客のマナーも耐えられないぐらい悪くなっているし、そろそろ映画館に行く勇気がなくなりそう。
舞踏会に集う品のない若者を見ながら「猿のようではないか」と目眩を覚えつつも、アラン・ドロンとクラウディア・カルディナーレのカップルが湛えている「若い」という美しさに希望を託し、自らは山猫として死ぬことを選ぶバート・ランカスターの側に、いつしか自分は立ってしまった。あと20年経ったら号泣してしまうかもしれない。

「アトラス考」第8回

次回の終章を残して本編としては最後となる『アイデア』連載。フンボルトの自然観に始まり科学と社会の近代化による世界観の変化を追った連載の最後は、生態系概念や自然保護運動の先駆者であるエリゼ・ルクリュの地図学的業績について迫ります。近代化によって喪失した自然に対する感受性を取り戻し、文明人を「自然」の中へと再統合させようとした彼は、人類とあらゆる生命が拠って立つ裸の大地のイメージを正しく描かなければいけないという信念を強く持っていました。最も敏感で人間性に満ちた人物による、最も繊細な環境イメージ論。

アトラス考──生態学的世界観の視覚化
第8回 自然に対する感受性と地球の描き方 エリゼ・ルクリュの地図思想
http://www.idea-mag.com/idea_magazine/385/

[正誤表]
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