アルドリッチ祭

巷ではアルドリッチ祭が行われているようなのだが、金もないし時間もないので家でDVDアルドリッチ祭。
初見の『ふるえて眠れ』。様々な角度から捉えられた邸宅のショットの連続に冒頭から痺れるが、『何がジェーンに』よりも感情の機微溢れる演技で演じるベティ・デイヴィスと彼女に優るとも劣らぬ演技の名優たち、セットの明快かつ豪華な衣裳に魅せられ続け、虐げ続けられた女の解放がさらなる悲劇という形でしか実現されないという冷酷な結末に感情移入とはまた別のところで圧倒されていたところ、彼女に唯一の理解を寄せた保険会社の老紳士との視線のやりとりを完璧きわまりない編集でたたみかけるラストシーンに打ちのめされ、さらに追い討ちをかけるように主題曲が被せられる。その瞬間、唐突に涙が流れる。傑作には言葉が要らないとはこのことである。
それにしても『北国の帝王』の異端さといったら…。どこが「究極の男のロマン」なんだよ!

第6回

『アイデア』での連載第6回は、「ナポレオンのモスクワ遠征地図」で有名なシャルル・ジョゼフ・ミナールです。「ナポレオン地図」が優れていることを指摘してそれでおしまいだった従来のデザイン史の言説から脱却するため、彼の仕事の全貌を見渡した上で再度「ナポレオン地図」の位置付けを見直し、さらに彼が統計地図の制作時に自らに課していた視覚化の原則を辿ることでその明快な思考を明らかにしました。観念や理論の表現のための図と、データを単純に視覚化し分析するための図に分けるとするならば、後者への分節が起きた大きな出来事ではないかと思います。10年来の宿題の提出がようやく終わりました。書店には10日前後に並ぶかと。

アトラス考─生態学的世界観の視覚化
第6回 シャルル・ジョゼフ・ミナールの流動地図――運河・鉄道時代の空間組織
http://www.idea-mag.com/idea_magazine/383/