12/30

年賀状的な葉書を買いに行くが、ろくなものが売ってない。多少惹かれるものは外国製で、かなり高い。この国にはちゃんとしたデザイナーがいるのは知っているが、そういう人たちは普段どこにいるのだろうというくらい、街にあふれるものにはセンスがない。ちゃんと調べなくては。
食事作って、夜中デヴィッド・O・ラッセル『JOY』を見に行く。久しぶりに映画館でこんな贅沢な画面を見られることに幸福を覚える。こんなに多くの人が関わって、こんな予算を投入して作られる画面が見られるだけでも映画を見に来た甲斐がある。ジェニファー・ローレンスの口喧嘩映画ももはや3本目で、1本目を超えることはあるのかなと思ったが、女優を信頼しきり、独立した女の顔を堂々と正面から捉えたという点で貴重な一本だった。偽物の雪をあくまで偽物として、しかし美しく降らせたというところに痺れる。

12/28-29 年末枯れすすき

12/28
昼、家で作業。
夕方、少しだけ外に出て物書きなどする
夕食後、トニー・スコット『デイズ・オブ・サンダー』観る。
親子ほど年の離れた相棒との信頼関係、主人公の無茶を止める年上の彼女、「感覚で乗る」主人公、仲間を死なせてしまった過去のある相棒、再び起こる仲間の悲劇にそれを乗り越える主人公、構造的にはほとんど『トップガン』と同じだが、それでも面白い。トム様とキッドマンのラブシーンはちょっと苦笑いしてしまうけど、ほとんど晩年の監督自身にしか見えないロバート・デュヴァル演じる相棒の痛快さにやられる。しかし『ハンガー』の後、『トップガン』との間に何があったのだろうか。人生そんなにも変わるものだろうか。

12/29
朝、年末年始に向けた買い出しでマルシェ。帰ってきて今日スイスに帰る友人S夫妻をお見送りする。
昼、モンスーリ公園近くのアトリエ住居群を見にいく。こんなところがあるなんて知らなかったが、パヴィヨン・ド・ラルセナルのパリ都市計画博物館が出している『パリ建築案内1900-2008』という膨大な建築データベース事典からちまちまiPhoneのマップにプロットしているうちにわかった。オーギュスト・ペレ、アンドレ・リュルサ、コルビュジエ等のそれぞれの考え方の違いがよく見える。こじんまりしたものから明らかに金持ちそうなものまで計画規模の幅もある。中が見られれば尚良いだろうが、まだ現役で使われている模様。その後、パリ国際大学都市を久しぶりに見て回る(外観だけ)。やはり日本館が温泉旅館の別館にしか見えない。
夕方、アジア食材の買い出しでピラミッド周辺、サン・トノレのとらやなど回って帰る。4合瓶で30ユーロ以上する日本酒コーナーの前で数十分考えあぐね、だったら30ユーロのワイン買った方がええわい!と諦める。
夜半、ドイツの友人Aに会う。ドイツでは年末「良い滑り(スライド)を!」と言い合うらしい。飛び降りるのではなく、なめらかに新年へと移行するのが良い形なのだとのこと。やはり新年よりクリスマスの方が重要なので、みんな2日から働き始めるそうだ。クリスマスにはしゃいでた寮のヨーロッパ人と、これからはしゃごうとしている日本人との温度差を感じる。

12/26-27

12/26(土)
昼間、作業したり、ノートを買いに行ったり。なんでこんなことがイベント化されなきゃあかんのだ、と思うがもう慣れた。そういうものなのだろう。しかしこの品質でこの値段はやはり解せない。
夕方スイスの友人Sの家で軽く飲んだりアコーディオンで民衆音楽の演奏を聞いた後、フラ語の先生Bのお宅に生徒一同招かれて食事。胡瓜から作った氷をわさびと一緒にビーツのスープに入れて食べたり、異常にうまいトマトの煮込みをいただいたり、もうお腹いっぱいだけどメレンゲのケーキが出てきたり。楽しい夜だった。フランス語の面白い語彙表現をもじって冗談を言っていたら、「アキオのフランス語はひどいわ!」と言われる。
シャンゼリゼの乗り換えを逃し、バスに乗ろうとするもクラクションを鳴らしながらタクシーが群をなしてやってきて、どうやらデモのようだし、なんとか到着したバスは満員だし、諦めて歩こうかとしたところでデモは終わり、そこにやってきたタクシーに乗って帰る。運ちゃんに「デモだったのあれは?」と聞くも、「ん?なんのこと?」と言われる。知らない人は知らないのね。

12/27(日)
夜、シネマテークまでダグラス・サーク『天が許し給うすべて』(フィルム)、フォード『静かなる男』(デジタル修復版)を見にいく。2本とも結婚したいけど家族が許さなくてすったもんだする話。これに小津を加えてくれればよかったのにと思いつつ、年末のひと時を堪能。フランスの観客はサークを見てるときに結構噴き出したり失笑する。登場人物がいかにもな反応をしたり、かなり強烈な皮肉を言ったり、もうほとんどわざとらしいとしか言えないようなタイミングで動物が登場したりするからだ。サークは登場人物を愛してはいるもののかなり突き放していて、実は誰にも感情移入なんかできない作りになっている。
そしてフォード。恋に落ちるには視線を合わせれば良い。ドアは蹴破るもの。タバコは投げ捨てるもの。ベッドは壊すもの。結婚してひと段落かと思いきや、強引な解決法が通じないアイルランドの町では二転三転。オハラを町中引きずり回し、兄貴と殴り合ってビール飲まないと終わらない。それで兄貴にも嫁が来て……という優しさ。それにしてもバリー・フィッツジェラルドの素晴らしいこと。叶うことならフィルムで見たかった。帰ってついビールを飲む。

12/23-25 クリスマス

12/23(水)
朝、寿司の仕入れ。
昼、ポルトガルの友人Aの部屋にお別れの挨拶に行く。ちょっとお茶するつもりがバカリャウのリゾットまでいただいてしまい、出発直前なのに非常に恐縮。しかしうまかった。スイスの友人Sやアルゼンチンの友人Fも来て一緒に食事する。アルプス出身というSの旦那さんの料理の話も興味深い。それにしても飛行機間に合ったのだろうか。
夜、モン・ドールをフォンデュ状にして食べる。まあまあうまい。

12/24(木)
今年いっぱいのフラ語の予定回数がすでに終わっていたため、今日は先生Bとお茶の会。動物愛護の話とユーロ圏特有の話になると私にはどうにも話すことがない。
ドイツの友人Lの家でクリスマスディナー会。ドイツ、イスラエル、アルゼンチン、オーストラリア、ルーマニア等々、手作り料理が持ち寄られる。我々は手巻き寿司とちらし寿司と饅頭。「スーシー」「アンコ」「モチー」が飛び交う。ルーマニアの人のロールキャベツが異常にうまく、余りをいただく。ここでしかできないようなクリスマスであった。つい日本には裸まつりがあるとか、正月にはモチを食べるが老人が喉に詰まらせて死ぬとか、そういう話をしてしまう。

12/25(金)
昼からサン・ジェルヴェ、サン・トゥスターシュを回る。朝来ればクリスマスのミサがあったらしい。夕方、日本の友人の働く某パン屋のカフェにひょっこり遊びに行く。おすすめのモンブランなどいただく。
その後、帰り道でペレ設計のベンジャミン・フランクリン通りのアパルトマンとイエナ宮/公共事業博物館(Palais d’Iéna/Musée des Travaux)、マレ=ステヴァンスの消防署を見る。
夜、デヴィッド・O・ラッセル『世界にひとつのプレイブック Silver Linings Playbook』を観る。『ザ・ファイター』も『アメリカン・ハッスル』もそれなりに良かったけど、これはちょっと奇跡的に良かった。ドキュメンタリーチックな撮り方をしてるくせに、ジェニファー・ローレンスが家に乗り込んでくるあたりで急に映画になるところがなんとも図々しい。賭けの相手になるじいさん、ずっとアラン・アーキンだと思ってたら違った。

12/19-22

12/19(土)
朝、途中まで見ていたポランスキー『チャイナタウン』の続きを観る。
昼、図書館。夜、T家へ。マグナムボトルを2人で空ける。その後も飲み続けていた記憶が。

12/20(日)
休日。寿司作る。ニースで食べたサーモンの昆布締めを再現しようと試みる。日本人は凄い。誰、最初に昆布で挟んでみた人。

12/21(月)
フラ語の先生Bの友人にして隣人BRの作品制作の手伝い。小学校のようなところのダンス用体育館を1日だけ借りて、鋼の作品を搬入して配置してみる。ベジタリアンの先生が作ってくれた豆のトマト味噌煮込みみたいなのを食べながら、納豆の話、蕎麦の話、小津の話などする。
夕方、もう一人の友人Jが作品をピックアップしに来て、市の貸し自動車サービスAutolibの車に乗って先生の家まで行く。夕食をいただくことになり、ポランスキー、ジョン・ヒューストン、オーソン・ウェルズ、『バートン・フィンク』のことなど話しながら、かぼちゃのスープ、茹でたネギにヴィネガーを和えたもの、オゼイユ(スイバ)のオムレット、レモンのアイスをいただく。オムレットは今まで食べた中で一番うまかった。フランスには無数の伝統野菜があったのに、最近規制ができたがために、それらのほとんどが売れなくなったとのこと。ジャガイモだけでも2千はあったとか。つい終電近くまで話し込む。

12/22(火)
朝、フラ語。夕方、ポランスキー『フランティック』みる。
夜、昨日買ったモン・ドールを食べてみる。

12/18 ロダン美術館

ヨーロッパの冬が辛いのは寒いからだと思っていたが、日が短いことのほうがもっと辛かった。太陽浴びないとやってられない。

昼、ロダン美術館。『Les Trois Ombres』、『La Porte de l’Enfer』、『Les Bourgeois de Calais』。ロダンが所蔵していたギリシャ・ローマの彫像の断片が印象的。正面入ってすぐの手も頭もない裸像が一番気になるのは国語の時間に『ミロのヴィーナス』についてのエッセイで教育されているからか。しかし彼も喪失された部分への執着はかなりのものだっただろうことは明白である。春・秋に来たら庭園もさぞかし綺麗であろう。パリにあって落ち着ける貴重な場所。もう公園がないとやっていられない。

夜、大学の後輩Sに会う。バドミントン部の後輩で、語学留学で来ているそう。深夜まで話す。

12/17

朝、フラ語。
昼、前から聞いていたプラス・ディタリーのラオス料理屋に行く。うまい。安いし毎日来てもいい。
夕方、オートゥイユ温室の庭園で過ごす。
夜、小津『風の中の牝雞』見る。

12/16

朝から図書館。
夜、コンサートに誘われて行ったが色々酷かったので途中で帰る。
夜半、O氏と少し飲む。

12/15

明るいうちに動き回らないといけないと思って早起き。朝からカフェ、レセプション、会計、パン屋を回って帰ってきて、フラ語。タチの話などする。
夕方、歯医者で保険の相談。
夜、ポルトガルの友人Aのオープンスタジオ。フラ語の友人ばかりだったのでつい深夜まで話し込む。しかしほぼイモと寿司の話をしていたような。なぜか守谷に住んでいたというアルゼンチンの夫妻と知り合う。なんでもレジデンスがあるらしく、とても良いところだったそうだ。仏教にも詳しく、私は驚くばかり。

12/14

朝から図書館。日の出が8時半、日の入りが17時。家→図書館→家の生活だとほとんど陽を浴びない。これは結構辛いなあ。北欧のレジデントの方々は冬に備えて良いテレビを買い込むそうなのだが、その気持ちもわかる。23時まで明るかった夏が懐かしい。図書館終わると暗くて写真も撮れないし、時間の使い方が難しい。

『パサージュ論』送ってもらったのだが3巻だけハードカバーを注文してしまったらしく、しかも文庫版と構成が違う。まあしょうがない。一旦船出してしまえばある物でやりくりしていかなければならない。これが「ノイラートの船」か(違う)。