「アトラス考」第7回

残すところ2回の『アイデア』連載、第7回は19世紀最後の四半世紀に「カルトグラム(統計地図)」を決定的に確立させたE・シェッソンの『図的統計アルバム』を扱います。19世紀全体を通じたフランスの産業化の完了と万国博覧会による知の交流の流れを受け、国民国家が成立する過程の中で統計グラフィックが果たした社会的役割と視覚化の方法論を辿ります。ある種例外的なので殊更に騒ぐつもりはありませんが、その中には何と19世紀の「時間地図」と呼べるものまで。こうなるともはやデザイン史とは一体何だったのかとさえ言いたくなってきます。

連載│アトラス考─生態学的世界観の視覚化
第7回 エミール・シェッソンと『図的統計アルバム』――国民国家のフィードバック機構
http://www.idea-mag.com/idea_magazine/384/

紙風船

渡仏した当日にようやく滞在先が決まる。友人宅に泊めてもらうことになっていたがフイに。直前までバタバタしていたので機内ではほとんど寝ていたが、少しだけ気になっていた『Molly’s Game』だけぼんやりと見る。ケヴィン・コスナーの生存確認。

シネマテークに見に行った山中貞雄『人情紙風船』に打ちのめされ、終わっても席を立てず。大雨の中、雨宿りをする質屋の娘を見ながら何やら良からぬことを思いつき、ギロッと変わる中村翫右衛門の目つきが、これから起こる悲劇を全て予兆する。生き生きとした町人たちの淀みない動きと聴覚に心地よい台詞回し。肝心の場面を敢えて見せない粋。空間の使い方…。一緒に行ったフランスの友人も感嘆し、「雨のシーン…!」と言っていた。いくら貧しくても心は気高くなくてはいけないという心構えをいつしか忘れてしまっていた。「しかし凄かったんだがやっぱり日本映画は(悲劇ばかりで)生きる気力を与えてはくれないな…。」とも。相すいません。日本映画特集で、他にも見たいものはあったのだが小津の『出来ごころ』だけ見て終わる。忙しくなったところでベルイマン特集とジェーン・フォンダ特集に変わって、よしよしと思っていたら、その後ルノワール特集が始まるとのこと。

10+1

「形象化された世界──《都市の記述》とその表現」
http://10plus1.jp/monthly/2018/10/issue-03.php

まさかの建築方面からお声がかかって、お題の「都市の記述」についてできるだけ虚勢を張ることなく率直なところを書きました。個人的にはより広い「世界の記述」に取り組んでいる最中であり、急な話でもあったので新しい調査はできませんでしたが、いつか書かれるべき「都市編」の序論として、問題意識の地図化ができたのではないかと思います。尚『10+1』は50号で終了後、Web雑誌として続いているとのことで、今回は第3号の「ノーテーション・カルトグラフィー」特集の回顧と更新が主旨という話でした。

アルドリッチ祭

巷ではアルドリッチ祭が行われているようなのだが、金もないし時間もないので家でDVDアルドリッチ祭。
初見の『ふるえて眠れ』。様々な角度から捉えられた邸宅のショットの連続に冒頭から痺れるが、『何がジェーンに』よりも感情の機微溢れる演技で演じるベティ・デイヴィスと彼女に優るとも劣らぬ演技の名優たち、セットの明快かつ豪華な衣裳に魅せられ続け、虐げ続けられた女の解放がさらなる悲劇という形でしか実現されないという冷酷な結末に感情移入とはまた別のところで圧倒されていたところ、彼女に唯一の理解を寄せた保険会社の老紳士との視線のやりとりを完璧きわまりない編集でたたみかけるラストシーンに打ちのめされ、さらに追い討ちをかけるように主題曲が被せられる。その瞬間、唐突に涙が流れる。傑作には言葉が要らないとはこのことである。
それにしても『北国の帝王』の異端さといったら…。どこが「究極の男のロマン」なんだよ!

第6回

『アイデア』での連載第6回は、「ナポレオンのモスクワ遠征地図」で有名なシャルル・ジョゼフ・ミナールです。「ナポレオン地図」が優れていることを指摘してそれでおしまいだった従来のデザイン史の言説から脱却するため、彼の仕事の全貌を見渡した上で再度「ナポレオン地図」の位置付けを見直し、さらに彼が統計地図の制作時に自らに課していた視覚化の原則を辿ることでその明快な思考を明らかにしました。観念や理論の表現のための図と、データを単純に視覚化し分析するための図に分けるとするならば、後者への分節が起きた大きな出来事ではないかと思います。10年来の宿題の提出がようやく終わりました。書店には10日前後に並ぶかと。

アトラス考─生態学的世界観の視覚化
第6回 シャルル・ジョゼフ・ミナールの流動地図――運河・鉄道時代の空間組織
http://www.idea-mag.com/idea_magazine/383/

どうせならステイサム映画が見たい

ジュラシック・パークの新しいやつ。
2018年新作恐竜CGお披露目会。確かにCGはよくできていて、デザイナーなんかバカバカしくてやめようか、とは思った。ジェフ・ゴールドブラム再登場は笑えるけどさ。まあでも人間と動物との付き合い方を考えさせる希少な映画ではあった。恐竜で金儲けしようとするやつらは全員喰われるべし。しかし猿の惑星ジェネシスみたい展開になっちゃったけど、本気で回収する気はあるのか。

ミッション・インポッシブルの新しいやつ。
全然よくわからなかったし、会話のシーンになると途端に苦笑してしまうんだけど、まあ、パリは意外と地理的に正しく撮っていたし、住んでいたところの近所も通ったから、千円分は楽しんだかな。なんで凶悪犯を財務省のヘリポートに降ろさないかんのかはわからんけど。それからフランスの警察はトム・クルーズを包囲できるほど有能じゃないと思ふ。莫大な予算を投入したジェイソン・ステイサム映画と言ってしまえばおしまいな気が。次回、デパルマに回帰!とかはさすがにないか。金をかけてる割に優雅さが無い。

貸本版の『河童の三平』を読了。鬼太郎より、悪魔くんより恐ろしいのはこれだと思う。何が怖いって、御大そのものが。常軌を逸している。

所感

駅前の広場に人がたかっていて、みんなうつむき気味にスマホを凝視しながら指で連打していて、これはひょっとして、ポ、ポケモ…。

おもしろきこともなき世をおもしろく

フランス人がHTML手打ちで作り上げたブリコラージュ丸出しのサイトの改修を相談されたんだが、HTMLファイルが200個以上もあるサーバの中身を見ながら、世の中みんな WordPress 化してしまって(まあこのブログもそうなのだが)面白いサイトが減ったことに気づかされる。テンプレで生産効率上げるために、内容をフォームに押し込めることばかり考えてしまうものなあ。自分が最初に作ったサイトのトップページは「Enter」も何もない、顔の絵のイメージマップだった。確か目をクリックすると入れるんだったな…。いやあ、あの頃の方がホームページを見るのも作るのも楽しかったよ。あの血肉がある感じ、たまんないね。「昨日ホームページ作ったんだけど見てよ」「新しいページ作ったんだけど帰ったら見てみて。ムフフ」とかいう会話が絶滅したもんな。「しょうがねえなあ」って苦笑しながら読んだりして。「ユーザビリティ」なんて言葉、吐き気がするほど嫌いだった。どこかの誰かが突然やってきて「ホームページかくあるべき」なんて官僚的で教育的な価値観を押しつけてきた。そんなの「思いやり」で片付けられるようなものだし、わかりやすさなんて数ある選択肢の一つでしかない。人間、多少使いづらかろうがいずれわかるし、面白い方がいいでしょ。わざわざそんなこと言わなければいけないほどわかりづらいサイトが多かったのは確かだけど(特に役所のホームページとかね!)価値観はそれだけじゃない。情報なんて糞食らえだ。情報デザインなんてもっと糞食らえだ。

世の中に必要なのは Javascript じゃなくてイメージマップだよ!Wordpress じゃなくて IBM ホームページビルダーだよ!たぶん。

4/6

春だ!

暑い!

明るい!

慣れない!

第4回

『アイデア』誌連載第4回、普段より4ページ増量でやっています。前回と合わせてフンボルト編後編とも言える内容ですが、国境を超えた地球全体にわたる自然現象の分布とその連関を主題とし、その中で生活する生物たちの生態にまで言及した「自然アトラス」の話です。4年前にこれを見た時に衝撃を受け、右も左も分からない中でとにかく地図を見まくってきましたが、何とか形になりました。これを知らずに我々はダイアグラムだの何だの言ってきたことを大いに恥じ入ります。地図の上でのモダニズムは19世紀初頭から既に始まっていた!

アトラス考─生態学的世界観の視覚化:第4回
「ハインリヒ・ベルグハウスの『自然アトラス』─地球の物理的記述と視覚言語の冒険」